2LDKの元!?カレ
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世田谷の三宿にある高層マンション。
エントランスのオートロック前で、私はアドレス帳のNのページを確認しながら部屋番号を押す。
すると暫くして、みちるの素っ頓狂な声が響き渡った。
――『え、ちょっと志保子?なに、こんな時間にどうした?』
「ごめん、みちる。今晩泊めてくれない?」
小さなカメラのレンズに向かって拝むように両手を合わせると、目の前の自動扉が音もなく開いた。
高級そうな応接セットが鎮座するロビーを抜けて、静かに降りてきたエレベーターに乗り込む。
みちるの住むこのマンションは、歴代の彼の誰かに買い与えられたものだ。
『モノに罪はない』がみちるの持論で、別れたからといってすべてを処分するなんてことはしない性質。
それで未だに住み続けているわけだが、そのことを彼に責められた事がないそうだ。
おそらく、そこをぐちぐちといい続けるような男とは、初めから付き合ったりしないのだろう。