2LDKの元!?カレ
「ありがと。私もみちるみたいになれたらいいのに」
「私に?」
みちるは小さめにカットされたチーズを口に放り込みながら首を傾げる。
「なんていうか私、恋愛下手でいつも余裕なくて。だから、みちるに憧れる」
「余裕がないっていうのは私も同じ。他人の目にはどう映っているのかは分からないけど、結構必死だもの」
「うそでしょ?そんなふうには見えないけど」
今度は私が首を傾げる番だ。
そんな私を見てみちるは「嘘じゃないから」と笑った。
「私は私で時々思うのよ。志保子みたいに怒ったり、泣いたり、素直になれたらかわいいのにって。でも結局、気取った女のフリとかしちゃうんだけどね」
みちるは私に気を使ってくれているのだろうか。私みたいに泣いたり怒ったりしたいだなんて、思うはずない。
「本当に?」
確かめる様にそう尋ねると、みちるは大きく頷いてみせる。
「本当。お互いないものねだりで、自分の良さを見失わないようにしましょうね、というわけでとりあえず今夜は飲もう」
「うん、ありがとうみちる」
「どういたしまして」
「乾杯」そういってお互いにグラスを合わせてから、深紅のワインをほんの少しだけ口に含んだ。