2LDKの元!?カレ
滑らかな口当たりと、幾重にも重なる果実の香り。
コクリと飲込んだ後に、どちらともなく視線を合わせたのは、想像以上にこのワインが美味しかったから。
「また彼に買ってきてもらおう」などと言い、早速メールをするみちるを見て、自分のスマートフォンが電源を落としたままだったことを思いだす。
聡のことだ、突然家を飛び出した私を心配していると思う。
あれからもう、二時間が過ぎた。
まさかとは思うが、捜し歩いていたりはしないだろうか。
もしそんなことをさせて、明日の仕事に差し支えたら申し訳が立たない。
これ以上迷惑をかけるのはさすがにまずいだろう、とカバンからスマートフォンを取り出して電源を入れる。
送ったメールはたったの一行だけ。急な仕事を思い出して、編集部にいるからと、苦しい嘘を吐いた。