2LDKの元!?カレ
ル・シエル





編集部に到着すると、西野くんは既にデスクに座って仕事を始めていた。

「おはよ、早いね」

そう声を掛けると、彼はクルリと椅子を回転させて私の方に体を向ける。

「おはようございます、小松チーフ。素敵なカシュクールドレスですね」

にこりと微笑む西野くんも、今夜の為にちゃんとドレスコードを意識した格好をしてきたようだ。

「西野くんもいいスーツだね。すごくおしゃれ。今夜、頑張ろうね」

ネイビーにチョークストライプが入ったタイトなスーツに、シックなパープルのソリッドタイ。靴に明るめのブラウンを持ってくるところが西野くんらしいセンス。

「ありがとうございます。何を着たらいいか悩んだので、チーフに褒めてもらえてホットしました」

照れ笑いする西野くんが素直にかわいいと思えて、そんな自分の気持ちにほんの少し戸惑ってしまう。

だから私は自分のデスクにカバンを置くと、デスクトップの電源を入れてから給湯室へ向かった。

マグカップにインスタントコーヒーを多めに入れるとポットのお湯を注ぎ、それをふうふうと冷ましながら少し啜った。

まずはこうして気持ちを切り替えてから今日一日を組み立てる。

午前中までに出来る仕事を終わらせて、西野くんと取材交渉のシミュレーションをしよう。

「大丈夫、絶対にうまくいく」

そう自分にいい聞かせて、私はデスクに戻った。

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