2LDKの元!?カレ
「だからさ、いいって。誕生日はおわったんだし。そもそも祝ってもらう関係じゃないし」
「……まあ、そういうなって。同居人の優しさに、素直に甘えればいい」
聡は困ったようにほほ笑むと、私の頭をその大きな手でくしゃくしゃにする。
その手があったかくて、そんなに優しくしてもらう資格なんてないのにって考えるとどうしようもなく胸が苦しくなる。
「ごめん」
「コラ志保子。こういう時は、ありがとうって、いうんだぞ」
まるで子供だ。
三十歳になったというのに。聡の前ではいくつになっても子供で、どうやっても変われない自分がいる。
「……ありがと。でも、本当に買ってこなくていいよ。別に変な意味じゃなくて、今日も帰りが遅くなるかも知れないし。聡の優しさには感謝してる」
「ああ、わかったよ。さてと、オレはもう行かないと。志保子、今朝はゆっくり?」
「うん、そう。いってらっしゃい、聡」
「いってきます」
私はその場で聡を見送ると、顔を洗ってから朝食の準備を始める。
卵を割りながら、思うことは、聡のこと。
お礼をいうつもりが、なんだかつまらないことをいってしまった。
こんなこと言うつもりなんかなかったのに。
どうせだったらほんの少しだけ早く起きて、聡の分も朝食を作ればよかった。そう後悔した。