2LDKの元!?カレ
「……じゃあ、私。先生のこと諦めなくてもいいんですね」
投げかけられた言葉に、私は頷いた。
すると彼女は立ち上がり「お忙しい中、お時間いただいてありがとうございました」と深々と頭を下げる。
それから重たそうなカバンを手に取ると、くるりと背中を向けた。
私はその後ろ姿を見送ると、編集部へと戻った。
「戻りました」
ドアを開けると、まるで待ち構えていたように西野くんが「お帰りなさい」と言って、飛び切りの笑顔を向けてくれる。
そんな西野くんを見たら、自然と笑みがこぼれた。
「ただいま。西野くん」
私はこの人の隣にいると決めたんだ。
なのに、なぜ、こんなにも心が苦しいんだろう。
「どうしました?チーフ」
「別に、なんでもないよ。さあ、仕事しようか」
その原因はわかっている。
だから今夜、ちゃんとマンションへ帰らなければ。