2LDKの元!?カレ
ドアの前に立ち、冷たいノブに手をかける。
それをゆっくりと引くと、部屋の明かりが薄く漏れ出して、廊下の床に光のラインを描いた。
聡はもう帰ってきている。
そう確認しただけで、更に心が重くなる。
顔を合わせたら、何からどう話せばいいのか、まだ迷っているのだ。
「……ただいま」
聞こえるか聞こえないかの声でそういうと、まるで待ち構えていたかのようにリビングのドアが開いて、聡が顔をのぞかせた。
「お帰り、志保子」
聡は穏やかな笑みを浮かべながら廊下を進んで、私の目の前に立つ。
「聡も、お帰り」
「ああ、うん。ただいま」
クシャっと笑ったその顔に思わず胸がギュッとなる。
好きだった聡の笑顔。
半年前に手放したはずのこの笑顔は、別れてからもずっと私のモノだった。