2LDKの元!?カレ

「……志保子」

泣いているのかと思った。

それくらい聡の声が震えている。

トクトクと響く鼓動は、私のものなのか、聡のものなのか分からないくらいに混じり合って聞こえて。

こんなふうに抱き合うのもこれで最後になるのだと考えながら、私はその胸に埋もれたまま、まるで惜しむように聡の体温を感じていた。

「ごめんな、志保子。緒方から聞いたよ。あの日、オレの制止を振り切って家を飛び出したのもその理由?」
「……う、ん」

そう聞かれて、私は曖昧な返事をした。

「聡は何も言ってくれないから、酷いなって思って頭にきてたの。でも、緒方さんから理由を聞いたら、仕方なかったのかなって思えたよ」

本当の理由はそれだけではない。

けれど、ヨリを戻したかったことも、彼女に嫉妬したことも、今はもう伝えるべきではないのだ。

< 95 / 240 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop