2LDKの元!?カレ
「……いいや。どんな理由があっても、志保子に無断で他人を家に上げるべきじゃなかったんだ。余計な詮索をさせたくなくて志保子に話さなかったけど、それも間違っていたんだと思うよ。本当に申し訳なかった」
聡は体を離して右手で私の頬に触れる。
「でも、こうして戻ってきてくれて、心底ほっとしてるんだ。もう、このままオレの傍から居なくなってしまうのかと思っていたから」
そして、そのまま肌をなでるように二度、親指を滑らせた。
キスされる。
そう思った私は、とっさに聡の手首を掴んだ。
「ダメなの、聡。私ね、付き合い始めた人がいるの。同じ職場の人だよ」
「志保子、本当なのか?」
「うん。だから、近いうちにこのマンションを出ていきたいと思ってるの」
聡の右腕の力が、ゆっくりと抜けていくのが分かった。
重たくなったそれを支えきれなくなった私は、掴んでいた手を離す。
すると聡は力なく、廊下の壁にその体を預けると、静かに目を伏せた。