幽霊女に恋をした。
「もうすぐ、全部、思い出せますかね…?」
俺が、言おうとしてやめた言葉を
晴は静かな声色でつぶやく。
晴は、思い出したいんだろうな…
そりゃあ、そうか。
生きていた時の、大切な思い出が
全部なくなっちまってるんだもんな。
けど、晴の顔には、いつものような
晴れやかな感じがない。
「思い出したら…」
そういって、晴は、口をつぐむ。
この言葉の続きはきっと…
『別れ』なんだろう。
俺は、あと、どれぐらい
晴と一緒にいられるんだろう?
この気持ちを、伝えられないまま
別れの時がきちまうのか?