私、ヴァンパイアの玩具になりました
暗い中、翔君が何をしようとしているか分かる手掛かりは音ダケで。

でも、手掛かりになるような音はなかった。

「……あの…翔君?」

…そ、そろそろ怖いです……。

「ちょっと待って…。後、口…少し開けて…?」

「あ、は…はい……」

翔君に言われた通り、私は少し口を開けた。

その瞬間、翔君は私の口の中に小さな塊を入れた。

「…………っん?!」

ど、毒!?毒ですか…?…あれ…?…でも、毒にしては何か…。

「もう目、開けていいよ」

翔君にそう言われ、私はゆっくりと目を開けた。

目を開けると、翔君はニコニコしていた。

「………なんか甘いです…」

口の中でコロコロと転がして舐めると、ふんわりと甘い香り。

これって、もしかして…。

「アメだよ、アメ玉。…美味しい?」

「はい!凄い甘くて美味しいです!」

翔君の質問に私は元気よく答えた。

甘いアメ玉も嬉しいけど。翔君の些細な優しさが嬉しくて私はふふっと笑う。

「…やっと笑った」

「え…?」

「優、さっきから声出して笑ってなかったからさ。…僕は優が笑ってる時が一番、好きだから。…優に悲しい顔は似合わないよ」

翔君の笑顔に私は涙が出そうになった。

「優一人で辛いことや悲しいことを溜め込む必要ないよ」

翔君はそう言って、私をまた優しく抱きしめてくれた。

「僕になんでも話してよ…。…大切な人が苦しい思いをしてるところを見たくないから…」

翔君の優しい言葉に私は思わず涙を流した。

「…ありが…とう…ございます……っ」

「うん、どういたしまして」

嬉しかった。嬉しかったんです。

こんなに優しい気持ちで、私の事を考えてくれてる人がいるなんて思ってもみなかったから…。

「優、大丈夫?もう家に帰ろっか?」

「いえ…。大丈夫です。……私、結構、授業出てないので、そろそろ危ないです…」

私が苦笑いを浮かべると、翔君がふっ…と小さく笑う。

「優、真面目ちゃんだー。…まぁ、そうだよね。…じゃあ、教室に戻ろっか」

翔君は私を離すと、私の頭を優しく撫でる。

「はい!」

私は元気よく返事をして旧体育館から出ようとした。

「あ、ちょっと待って優!」

「……へ?……あわわ…!え!?」

その瞬間、翔君に腕を急に引っ張られたと思ったら、翔君は私の目に触れるだけのキスをした。

と、突然のことに変な声を出してしまいました…。

「目、真っ赤だったから。治そうと思って!」

いたずらっ子みたいに無邪気に翔君は笑う。

「あ、…へ……あ、ありがとうございます……!」

「行こっか」

「は、はい!」

私と翔君が旧体育館を出る頃に、二時限目が丁度、終わるチャイムが鳴った。

「あ、丁度鳴ったね」

「ふふっ…、そうですね」

そんな他愛もない話をして、私と翔君は教室へと戻った。

教室へと戻ると、王神君が二時限目のノートをとってくれていて。

嬉しくて王神君にお礼を言おうとしたら、途中で裕君が王神君に体当たりをし始めてしまい。

王神君にお礼も言えないまま、三時限目が始まってしまいました。
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