私、ヴァンパイアの玩具になりました
ご飯を食べ終わった後、私は自分の部屋に戻りお風呂へ入った。

…でも、何故かゆっくりと入れなくて。

私はいつもより早めにお風呂からあがって、濡れた髪の毛のままベットに倒れ込んだ。

「………藍さん、…お腹空いてないかな…。…他の女の子の所行ってるのかな…?」

…なんか…、それは嫌です…。

そう考えただけで胸がズキズキと痛むんです。

……おかしいんです、私の心臓…。

「………ちょっとだけ…」

ちょっとだけ…、藍さんとお話ししたいだけですから…。

私は濡れた髪の毛をバスタオルで拭くと、そのバスタオルを椅子にかけて、部屋から出た。


「……そういえば私…」

藍さんの部屋、どこかにあるのかよく知りません…。

私の部屋は五階…。

薫瑠さんと日向さんの部屋も五階でした。

翔君に教えて貰った翔君の部屋は三階で…。

確かおじさんと初めて会った時の…というか連れ込まれた部屋は二階…。

…そう考えると……四階…ですかね?

「…一階下がれば四階ですね…」

そう思い立った私は階段で一階下がった四階へと向かった。


「………………」

意外と簡単に見つかりました…。階段を下がって右から五番目の部屋。

藍さんの部屋だと分かった原因。

それは…。

「…ノックしてから入れ、藍…。…ありがたい事にお名前まで…」

ドアノブにかかっていた少し乱暴な字。でも、どこか優しそうな字。

私はクスッと笑うと、その字を少しの間眺めていた。

「…………よし…」

私は扉をノックした。

…藍さんとお話ししたいだけ、と言いましたが。

……他の女の子の所へ…、行ってほしくなかった…、という理由もあったんです。

「………誰だ?」

「…あ…、えっと…」

藍さんの声が聞こえた瞬間、何故か自分の名前が飛んでしまい変な声を出してしまう。

「あぁ、優か…。はいれよ」

藍さんは私の声を聞いて、私だと分かったのか藍さんは私に部屋にはいるように言ってくれて。

「…すいません、…失礼します」

私は少し震える手で扉を開けて、オドオドと部屋にはいる。

「…どうした?」

私が顔をあげると、藍さんは私に優しい声をかけてくれた。

「少し…、お話しがしたくて…」

…他の女の子の所へ言ってませんでした…。少し嬉しいです。

嬉しくて思わずあがりそうになった口角を頑張って止める。

藍さんはお風呂からあがったばかりなのか、髪の毛が少し濡れていた。

「話?…なんだ?」

「…いえ、そんな大きなお話しでもないんです。……藍さんとお話しがしたいな…、と思って勝手に来てしまいました…。すいません、迷惑でしたらすぐに部屋に戻ります…」

「別に迷惑じゃねぇよ」

藍さんはそう言うと、ベットにドカッと座った。

「…本当ですか?……誰かの所とかに行く予定とか…」

「ねぇよ、そんな予定」

「……そうですか…」

「あぁ」

良かった…、と思ったけど。

……会話のネタが……、…あ…一つだけ。

「…今日、なんでご飯いらないと言ったんですか?」

私が出した会話のネタに、藍さんは肩を少し震わせる。

「………………」

「藍さん?」

私が不思議に思って近くに寄ろうとしたら。

「………俺にそれ以上…近づくな」

藍さんは私に近づくな、と言って私に手を伸ばす。

「……………ぇ…」

藍さんに冷たく言い放たれた言葉に、私の頭は鈍器で思い切り殴れたかのような痛みを受けた。


…私、藍さんに嫌われたんですか…?

なにか…、私、したんですか…?

……どうしよう…、藍さんに…嫌われてしまっ…。

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