私、ヴァンパイアの玩具になりました


だけど、私には喜んでる場合じゃないんです。

ちゃんと言わなくてはダメです。

私がここにいる理由はたった一つ。

「…でも、藍さん…」

「ん?」

すぅ…、と少しだけ空気を吸い込んだ。

「……私は藍さんや他のご兄弟の方に血を飲ませる、というおじさんとの約束でここにいるんです…」

「…………………」

「だから…さすがに殺されるのは嫌ですが…。…殺さない程度なら……、突然飲んで…何しても…いいんですよ?」

私がそう言った後、藍さんはまた短い溜息を吐いた。

でも、さっきとは少し雰囲気の違う溜息。

少し…、怒ってる…溜息…?

「………お前さ」

「はい…?」

「他の奴にそんな事…、…ぜってぇ言うなよ」

藍さんの声のトーンが怖い方に下がっています…。

何か…、藍さん……怒ってますよね…?

「へ?何でですか?」

私、藍さんが怒るような変な事言いました…?
 
「…お前さ…、俺が男だって知ってる?」

「…もちろん、知ってますよ!」

「……お前、自分が女だって自覚は?」

「…あ、ありますよ!胸小さくても一応、女の子です!」

私が女の子としての自覚がある、といったら藍さんは私から離れた。

「なら、男と二人の時にはそんな事二度と言うな。分かったか?」

「……え、でも…」

「分かったか?」

「は、はい…」

私から離れて背中を向けている藍さんに、私は扉から離れると藍さんに向かってちゃんと返事をした。

「まぁ、いいや…。こっち来い」

藍さんは自分のベットに腰掛けて、私に手でこっちに来るようにジェスチャーした。

「あ、はい」

藍さんの近くへ早足で行くと、藍さんに目の前まで腕を引っ張られる。

「……………」

「あ、あの…?藍さん…?」

「……ここに座れ」

「え?」

藍さんは自分の太ももの上に座れ、と私に言う。

「…早くしろよ」

「え、あの…、私、重いので…」

「…重くねぇから、早くしろ」

「…ぇ、えぇ…?……すいません……。……し、失礼します…」

私は重くないか不安になりながらも、藍さんの太ももに座る。

視線を向ければ、藍さんの顔がすぐ目の前にあって。

私が恥ずかしくなって目をそらすと、藍さんは私の顎をグイッとあげて私と目をあわせる。

「「………………」」

無言の中、私と藍さんはただ視線を合わせるだけ。

「………わりぃな…。…さすがに…、もう……。我慢できねぇ…」

藍さんは無言だった空気を終わらせると、私の首筋に牙をたてた。

「────……ぅあ…っ」

藍さんの牙の感触に声をあげると同時に、私の身体は熱を持ち始める。

血を飲まれる事に私はまだ慣れていない私には、例え藍さんでもちょっと怖くて。

身体の震えは、未だに少し残っていた。
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