私、ヴァンパイアの玩具になりました
長い階段をのぼって薄暗い廊下を通り、藍さんは、ある一つの部屋の前に私を案内してくれた。


「お前の部屋だ。多分」

た、多分?

「あ、ありがとうございます……」

藍さんは、部屋のドアを開けた。私は、藍さんの後から部屋の中にはいった。

「うわぁ!広いし!可愛い!」

部屋の中には、赤とピンクでまとめた家具があった。

私は、一つだけ仲間外れの色をした青色のクッションを手に持った。


なんで、コレだけ仲間外れ?

「青って綺麗だよな。俺、青好き。因みに、このクッションも好き」


私が持っている青色のクッションを、眺めながら藍さんは、呟いた。

「赤髪なのにですか?」

「青、だって愛希じゃん。かぶるの余り好きじゃないし」

「ふふっ……。そうですか……。でも、藍さんは赤髪が一番似合いますよ」

私は、藍さんが好きと言った青色のクッションを抱き締めた。


何故か、藍さんが、この青色のクッションを好きって言った時。沢山ある家具の中で、一番青色のクッションが好きになった。

「………………」

「ふわふわしてる………」

「……………なぁ」

藍さんは、私が抱き締めていた青色のクッションを取り上げてベットの方に投げた。

「……なんですか?」

うぅ……。気持ち良かったのに……。

「今から言うことは、本当の事で嘘じゃない」

「………………?」

「ココにいる俺達家族皆。……ヴァンパイアだ」

藍さんが、真剣な顔をして私に伝えた。


私の頭の中は、絶賛混乱中。

「……………え?」

「だから、ヴァンパイア。俺も、父さんも。皆ヴァンパイア」

「……………え?!」

私は、何度も聞き返す。藍さんは、その内面倒くさくなったのか。


「じゃあ、実際にお前の血飲んでやるよ」

「ええぇぇえ?!」


藍さんは、私の腕を引っ張り、私は、藍さんに引き寄せられる。

「多分、最初はちょっとだけ、いてぇかも、しんないけど……」

藍さんは、私の首筋に、また唇を当てる。少し、藍さんが私の体を支えてくれる。

牙みたいなのが首筋に少しずつ刺さっていくのが分かった。

「い゛─────」

痛い……。……だけど、だんだん…、痛みに慣れて、その痛みが気持ち良くなってくる。

静かな部屋の中に、私の声にならない声と、藍さんに血を飲まれる音が響いた。


「……………ん、………さすがSSAだな。最高に美味い………」

「………はぁ……はぁ……」

私は、藍さんに体を支えてもらってた手を離された後、腰が抜けて床にへたり込んだ。


「………な?コレで信じただろ?」

「……………は、はぃ……」

「ヴァンパイアは、いるんだよ。お前の目の前に」

藍さんは、しゃがみこんで、私と視線を合わせた。


「…………………」

「ほら、早く消毒するぞ。棚から救急箱だせ」

藍さんは、私の身長ギリギリな高さにある、ちょっと小さい棚を指差した。

あ、ちゃんと消毒してくれるんだ……。

「は、はぃ………」

………………。腰が抜けているから、動けない。だからといって、藍さんに、腰抜けてる何て言えない……。

……………あ!そうだ!


「………………。なにしてんだ?優……」

「ほ、匍匐前進です」

「なんで?」

「う、運動不足なので!」

ら、藍さんの視線が凄い痛い………。

「…………くくっ……。本当に、優といたら飽きねぇ………」

藍さんは、私の事を指差して大笑いしていた。


「あ、ありがとうございます!」

「くくっ………。優みたいな女、初めてだ……」

「あ、ありがとうございます?」

「優って、良い意味でバカだよな。人を笑わせる」


「………それは、どっちにしろバカって事ですよね」


匍匐前進の体制のまま、私は頬を膨らませた。

「まぁな……」

しかも、藍さん、認めたよ……。


「ぶー………」

私は、いじけながら、匍匐前進して棚の真下まで行った。
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