私、ヴァンパイアの玩具になりました
「れ、嶺美さん?大丈夫ですか……?」

しゃがみこんだ嶺美さんの肩を触れようと思ったけど、途中でヤメて声をかける。

「くっ……ふふ…」

嶺美さんは、未だに肩を震わせながら笑っていて。

えぇぇえ……。わ、私、対応に困っちゃう…。

「あ、あの、寒くなってきましたし。家の中に戻りませんか?」

「…………………」

嶺美さんは、急に立ち上がって私の腕を引っ張った。

「きゃっ……、んむ………」

「こうしてれば、寒くないし………」

れ、れれれれ嶺美さんに抱き締められてる?!

「ぁ、あの…………」

「なに?俺の事、満足させられないの?それでも、俺達のお世話係り?」

「………す、すいません」

な、なんで、私謝ってるの……?


「分かればいいの。分かれば…。偉い偉い」

嶺美さんは、私の頭を優しく撫でる。


…………………。子供扱い?た、確かに、高校一年生なのに、結構小さいですし…?もしかして、小学生に間違われてる?!

「あの実は私、高校一年生です」

「…………………?!え?……マジで?」

嶺美さんは、ビックリした声で叫んだ。

やっぱり、幼くみられてたか………。

「は、はい…。だ、だから一人暮らしする事になって……」

「ココの家に迷い込んだ、って事だろ…?」

「まぁ、そうです………」

あ、あれ?高校一年生って言ったのに、離してくれる様子が無い………?

も、もしかして、信用されてない?!

「あー、血飲みたい………」

嶺美さんが、急に私の首筋を長い指でなぞった。

「…………………」

「飲んだらダメ?」

「ぇ……ぁ…の……」

「拒否権ない…、って言ってもダメ?」

嶺美さんは、私と視線を合わせる。

「……………あ、の……」

な、なんで、この兄弟の方達と視線を合わせると体が動かなくなるんだろ……?


「あーーーもーーー!!!!やっと見つけた!!!」

誰かの声が聞こえた瞬間、嶺美さんはバッと私から離れた。

「ちっ………。邪魔しやがって……」

声の主は、裕君だった。

「なんかさ、ちょっと聞いてよ!…僕なんにも悪くないのに、お父さんに二人の事探してきてって言われたんだよ?まぁ、皆探してるんだけど!」

裕君は、私の手を握りながら文句を言っていた。

「一生見つけなければ良かったのに……。おい、手離せよ」

「なんでー?」

「お前、うるさいから、離れて歩け」

「分かった!じゃ、優!一緒に行こ!」

「へ?……ぅわわわ……!!!!」

裕君は、私の手を引っ張り走り出した。

「優、もっと速く走れないのー?」

走りながら、裕君は私に文句を言ってきた。

「す、すいません…。……わ、私、運動神経、わ、悪いので………!」

「ふーん、まぁ、いっか!」

裕君は、急に立ち止まった。私は、裕君の背中にボフッとぶつかった。

「ぶっ………。………ど、どうしたんですか?」

「見て!空、満月!」

裕君は、空を指差してニコニコ笑っていた。

「ほ、本当ですね」

さっきも、見たけど、やっぱりキレイだな…。

「僕、満月嫌いなんだ」

「え?そうなんですか?」

「うん。全部を照らされるから、僕の悪いところまで照らされてる気がして嫌い」

満月を見てる裕君の瞳には、キレイな満月がうつっていた。

「そ、そうなんですか………」

「大嫌い。愛希と同じくらい大嫌い」

裕君は、顔を無表情にして口を尖らせた。

「……そ、そうですか………」

二人って、やっぱり仲悪い?
< 19 / 122 >

この作品をシェア

pagetop