私、ヴァンパイアの玩具になりました
「それに、僕は家族みんな嫌い。大嫌い」

裕君は、私と向かい合うようにして、笑顔で言った。

「……………え?」

なんで?あんなに楽しそうに話してたのに……?

「その前に……。家族みんな、僕の事嫌いだろうし」

「そ、そんなこと無いですよ」

「そんなこと、あるんだって」

裕君は、ニコッと私に向かって微笑んだ。でも、どこか寂しそうな表情で……。

「………………」

私は、言葉をなくしてしまう。

そんな沈黙を破るように、裕君が口を開いた。


「だからさ」

私の手を握る裕君の手の力が少し強くなった。

「はい?」

「僕のこと好きになってよ」

「え?」

「そして、僕を愛してよ」

「え?!」

で、でも、私初恋もまだなのに……。


「僕に愛情をちょうだいよ」

「………………」

最後の方が少し涙声で。裕君は私に訴えかけた。

「ぁの…私…、」

私が、口を開いた瞬間、裕君の背が急に低くなった。

「え?」

「ぅわっ…!!!」

裕君は、私の方へ倒れ込む。私は、裕君の体をギリギリ支えた。

「だ、大丈夫ですか?」

一瞬見えた裕君の頬は、赤く染まっていた。


「ちょっと、裕。優を見つけたら、ちゃんとリビングに戻ってよ……」

裕君の後ろにいたのは、愛希君だった。

「うるっさいな……。別に良いじゃん」

裕君は、ゆっくりと私から離れた。

「早く戻るよ」

愛希君は、一人で歩き出した。裕君は、小さく舌打ちしてから、私の手を引っ張り愛希君について行った。


「あ!優さん!どこに行ってたんだい?」

リビングには、私達が、戻ってくるのが分かっていたのか、おじさんと兄弟の方達が、リビングに戻っていた。

嶺美さんは、ヘッドホンで曲を聴いているのかな?私の話を聞いているようにも見える。


「えっと。嶺美さんと、広い広い庭をお散歩して…。…裕君と歩いて…。…裕君と歩いていたら愛希君と会って。今、リビングにつきました」

「そうかい、そうかい。…何もされなかったかい?」

おじさんの問い掛けに、嶺美さんが肩を少し震わせた。

それから、嶺美さんは私の方を向き。口パクで私に『血飲んだ事言うな』と、怖い顔で伝えた。

「は、はい!」

私は、バレないように笑顔で答えた。

「嘘ついてるだろ。優」

藍さんに、ギロッと睨まれた。私は、慌てて視線をそらした。

「つ、ついてません」

「………………、だから、さっき俺言っただろ。嘘つくなって」

「ついてませんもん……」

私は、バレないようにゆっくり腕を後ろに組んだ。

「お前、腕見せろ」

藍さんが、私に命令口調で言ってきた。

「み、見せる理由が分かりません……」

「良いから、見せろって!」

藍さんが、立ち上がり私の近くにくる。

「こうしてないと、立てませんもん……」

私、我ながら嘘つくの下手くそだな……。

「良いから、見せろって!!」

グイッと腕を引っ張られる。私は、力を振り絞って、藍さんの力から逃げようとする。
< 20 / 122 >

この作品をシェア

pagetop