私、ヴァンパイアの玩具になりました
「……藍、ヤメろよ……」

嶺美さんが、私の前に立ち、藍さんの腕をほどいた。

「………………、ふーん。親父、優に何かしたの嶺美だ」

藍さんが、嶺美さんを指差して、おじさんに言った。


「え?」

な、なんで分かったの?!

「証拠ないだろ」

嶺美さんは、引き下がらない。

「あのな?……よく考えたら、お前が人を庇うこと事態、奇跡なの。奇跡が起きるわけ無い。…だから、バレたら自分が良くないことが起きるから優を庇う。……俺、間違ってないよな?」


「…………………」

嶺美さんは、表情一つ変えない。

「お前は、俺をお前のなんだと思ってんだよ」

藍さんは、ドヤ顔で嶺美さんを見る。


「奴隷」

嶺美さんは、サラリと酷いことを言った。

「弟だよ!!アホ!!」

藍さんは、嶺美さんに怒鳴った。

「あ、悪い。本音が出た」

「お前、俺のこと今まで奴隷だと思ってたのかよ!!」

「あぁ」

「ふっざっけっんっなっ!!」

藍さんは、嶺美さんの脚を蹴る。だけど、嶺美さんはビクともしない。

「…………………」

「で?嶺美、お前は、優さんに何かしたのか?」

おじさんが、嶺美さんの事を優しい目で見つめた。

おじさん……、手がグーになってます……。

「………、したけど何?」

「このバカ双子め!もっと、日向じゃない方のお兄ちゃんの薫瑠を見習え!」

おじさんも、サラリと酷いことを言った。

「ちょっと、ちょっと。父さん、僕のことも見習って良いよ」

「お前のことを見習ったら、優さんが可哀想なんだよ!」

「えー?BC優さん、皆が僕みたいになったら嫌だー?」

日向さんが、ニコニコ笑いながら、私に聞いてきた。


は、…ハッキリと言えない……。嫌だ、なんて言えない……。

「………ぇっと……、…………。………あはは」

必殺!笑って誤魔化す!!

「答えなかったから、今度、お仕置きねー」

日向さんは、ニヤニヤ笑っていた。

「い、嫌ですよ!痛いの嫌いです!」

なんか、女王様にムチで叩かれるイメージがある……。


「大丈夫だよー。優しくシてあげるから!」

「そ、それでも嫌です!」

「口答えしたから、やっぱり優しくシてあげなーい!」

「おい!日向!優さんが困ってるだろ!いい加減にしなさい!」

おじさんは、日向さんの頭の横をグーでグリグリと動かしていた。

「ちょっ!父さん!痛い!!痛い!!」

「ほら、謝れ!」

「ちゅいまちぇーん!!」

日向さんが、赤ちゃん言葉で、私に謝った。おじさんは、明るい笑顔で日向さんの頭を思い切り殴った。

「ねぇ、もうご飯食べようよ」

翔君の一言で、おじさんが、苦笑いをして冷や汗をかいた。

「あ……」

「「………………?」」

「………今日、パーティーだった!忘れていた!しかも今……六時四十分…か…。優さん、息子達!すまんね!パーティー、ここの家で七時三十分からだったのを、すっかり忘れていた!」

「は、はぁぁああああ?!」

藍さんが、叫ぶ。

「すまんね!早く、スーツに着替えて着なさい!優さんには、ドレスを今、用意してあげるね!」

おじさんは、苦笑いをしながら、舌を出した。

「親父!ふざけんなよ!可愛くねぇよ!気色悪りぃよ!」

「おい!藍!もっと、オブラートに包め!」

「うるっせぇよ!ちっ……。早くスーツ着ねぇと……」

藍さんが、自分の部屋に走って戻っていった。その後に、続くように皆さんが各自の部屋に戻っていく。


「わ、私は?」

私が、静かになったリビングで、ポツンと立っていると。

「優様!ドレスは、コチラです!」

「…………………?!」


多分、ここの家のメイドさん。どこから来たのか分からないくらい静かに私の後ろにいた。

私は、ビックリしすぎて、声が出なかった。そんな私を無視するように、メイドさんは私の腕を引っ張って広い部屋に連れ込んだ。

広い部屋には、沢山のメイドさんがいた。

これから、ちょっとした地獄の始まりだった。


沢山のメイドさんに、あっちこっち引っ張られ。人形みたいに、ドレスを着たり脱いだり着たりを繰り返し。

でも、何故かメイクは軽くすまされた。メイドさん曰く『優様はそのままで大丈夫です』らしい…。

そして、ちょっとした地獄が終わった頃。私の準備は、メイドさん達のお陰で終わり。ギリギリ、パーティーというものに間に合った。
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