私、ヴァンパイアの玩具になりました
「ダメだよ。残念だけど。今日、僕と優は花農園で待ち合わせしてるから…。……優、僕との約束忘れてたんだ……?」

愛希君は、微笑んでいるようで怒っていた。

「わ、忘れてな…」

私は、言い訳を考える。だけど、愛希君には、バレているようで……。


「じゃあ、なんで返事しようとしたの?」

「……そ、それは………」

「なに?」

愛希君は、私の事を睨みつける。私は、視線をチラチラと左右に動かす。


「それは、愛希より俺のケーキの方が良かったからじゃない?答えは簡単だったね、愛希」

鬼稀先輩は、ニコニコ笑っていた。愛希君は、睨む相手を私から鬼稀先輩に変えた。


「……………ちっ」

「あー、怖い怖い。……優さん、俺のお世話係りになってよ…。こんな怖い思いさせないから…」

鬼稀先輩は、優しい声で私の耳元で囁く。


「で、でも…。もう、おじさんと約束したので……」

「ね?お願い……」

「ぁ、あの……」

私が、どうにかして、鬼稀先輩の誘いを断ろうと言葉を考えていると、綺麗な音楽が止まった。


「あ、終わった……」

「じゃあ、音楽が止まったことだし。優さん、俺の家に行きましょう」

「行かせねぇよ?」

「そうだよ。ダメだよ……」

藍さんが、私の肩を掴んだと同時に。

「あ、唯ー!」

日向さんが、手をふってから、走って鬼稀先輩の背中にぶつかっていった。

「ぃた……。日向先輩……。なんですか?」

あからさまに、嫌な顔をする鬼稀先輩。そんな鬼稀先輩の顔を見て、日向さんは嬉しそうに微笑んだ。

「いやー、唯がさ。早速BC優さんの事気に入ったんだなっと、思ったら何かぶつかりたくなった。ごめんね」

「「「……………………」」」

理由の意味が分かりません……。

「まぁ、それは良いとして……、唯。あの人が呼んでたよ」

日向さんは、綺麗な女の人を指差す。鬼稀先輩は、ため息ついてから私の頭を撫でた。

「じゃあ、また今度会いましょうね。優さん」

「ぁ、はい!」

私が、返事をすると、鬼稀先輩は優雅に綺麗な女の人のところへ歩いていった。

「って、ことで……。優……、花農園行くよ……?」

愛希君が、無表情のまま私の手を握り走り出す。


「ちょっ、ま、待って……」

私は、ドレスの端を片手で掴みながら走る。

ど、ドレスだから走りづらいよ……。


少し前を走る愛希君の顔を見ると。笑っているのか、怒っているのか分からない表情だった。
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