私、ヴァンパイアの玩具になりました
ピピッピピッ…、と体温計が鳴った。私は、体温計を外して熱を見た。

「……何度だった?」

愛希君に聞かれた私は、自分の熱を確かめてから、告げた。

「さ、三七度八分……です…」

「「……………………」」

私が、体温計に表示されている数字を言うと、二人の間に沈黙がはしった。

結構な熱です……。

「…ぼ、…僕…今、お父さん呼んでくるね…。優、ちゃんと安静にしてベットに横になって寝てて」

愛希君が、ドアを開けてから、私の方を向いて言ってからドアをゆっくり閉めた。

「は、はい…………」

愛希君は、体温計を持っておじさんを呼びに行ってくれた。

「ま、まさか、こんな早く体調を崩すなんて……」

私……。神咲優…。早くも風邪を引いてしまいました…。

私は、ベットに寝っ転がって布団を首辺りまでかけた。

静かな部屋で、安静にしていると。急にドアがバンッと荒々しく開いた。

そこには、おじさんと愛希君がいた。

「優さん!熱、大丈夫かい?」

ズカズカと、おじさんが大声で言葉を発しながら焦って私のベットに近寄った。

「だ、大丈夫です……」

私は、声が少し響いたけど、我慢して苦笑いで返した。

「お父さん…、優、具合悪いんだから、そんな大声だしたら迷惑だよ」

愛希君が、おじさんの服をチョコンッと掴んでいた。

「あ、す、すまんね……。うっかり、取り乱してしまった……。風邪薬を今、持ってくるから、少し待っててくれ……」

「ありがとうございます……」

おじさんは、私の頭を優しく撫でてから私の部屋を出た。

「……ていうか…、迷信って嘘だったんだね…。『バカは風邪引かない』って。その真逆だよね……。『バカは風邪引く』…だね」

「うっ……………」

「本当にビックリだよ。腰抜けの騒ぎだよ」

愛希君は、両手を横に挙げて首を左右にふった。


ちょっ、え?そ、そこまでヒドいことですか?そんなに、私はバカだって思われていたの……?

「……な、愛希君、ちょっとヒドいです……。私、そんなにバカじゃないですよ……?」

多分……。心の中では、自分でも疑問に思ってしまう。

「ヒドい?…優の頭の方がヒドいよ?」

愛希君は、無表情のまま冷たい目で私を見つめた。

「……………………」

ガーーーーン………。い、いくらなんでも、それはヒドい……!!私が、バカだからって……そんなに言わなくても…さ………。

「どうしたの?頭の次は顔?」

「……………………」

ガガガガーーーーン………。最終的には、一番気にしてる顔を言われる始末ですよ……。

「ふふっ………、優って顔に気持ちが出すぎ……。もう十面相に近いよ………」

「…………………?!」

私は、両手で顔を隠した。

そ、そそそそんなに出てたのかな?!出てたのかな…………?!

そんなに私は分かりやすい。単純バカなんですか?!自分にビックリっすよ?!
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