私、ヴァンパイアの玩具になりました
「優さん‥‥‥?大丈夫ですか…?」

私の部屋に入ってきた人は、薫瑠さんだった。薫瑠さんは、優しく微笑んだ。

「あ、薫瑠さん…。…はい!…後は、薬のんで寝れば治ります!」

私は、薫瑠さんに笑顔で答える。

「…そう…ですか……。なら、良かったです……。……あ、コップに水いれてきますね…」

お盆に乗っていた空のコップを、薫瑠さんは手に持って、水道水をいれて持ってきてくれた。

「ありがとうございます!」

「でも……」

嶺美さんの時みたいに、コップに手を伸ばすと。同じように、薫瑠さんは一旦コップを私から離す。

「…………………?」

…また地味にイジメですか?!あの優しい薫瑠さんまで、私にイジメですか……?!

「俺が、薬を飲ませたいです」

玉薬一粒を、長い指でつまんで。私の閉じた唇に玉薬を押し付ける。

「……………で、でも…」

私が話そうとすると、薫瑠さんは玉薬を唇から離す。

わ、私はそこまで子供じゃ………。

「水なしで薬のみますか?」

ニコッと薫瑠さんが微笑む。私は、苦笑いをこぼした。

「……い、いえ………」

「じゃあ、俺に飲まさせて下さい。……ほら、口を開けて下さい」

「……は、はい………」

私は、仕方なく口を開けた。薫瑠さんは、一回微笑むと、水のはいったコップを私の唇にあてて、ゆっくり水を口の中に注ぐ。

私は、玉薬をゴクッとのみこむ。

…でも、どんなに優しくゆっくり水を注いでくれても水は零れるもので。

気づいたら、口から少し水が出て顎を伝っていた。

「……零れちゃっ…、………………っ?!」

私が、パジャマの袖で水を拭こうすると。薫瑠さんは、私の手首を掴み、その水を舐めた。

「すいません。…喉がかわいていたので…」

薫瑠さんは、いつも通り優しく微笑んだ。


「い、いえ………」

か、顔が赤くなっていくのが分かる……。

「………………?優さん、熱あがってきたんじゃないですか?顔真っ赤ですよ?」

薫瑠さんは、首を傾げた。

「…ひや!ひょうへふか?!」

「………………?」

か、噛んでしまった……。薫瑠さん、苦笑いしてる…。

「す、すいません…。噛みました……」

「ふふっ……。そうですか……」

薫瑠さんは、私に優しく微笑みかける。その時、薫瑠さんが何かを思い出したように、あ……、と声をだした。

「どうしたんですか?」

「優さんは、どこの小学校に通っているんですか?」

「しょ、小学校?!」

「え?…今、小学何年生ですか?」

薫瑠さんは、本当に分かってないかのように、私に問いかける。

「わ、私…。高校一年生です………」

「……………えぇ?!」

「「……………………」」

私と薫瑠さんは、無言のまま固まる。

「すいません……、私、身長低いので。いつも、間違われるんです……」

「そ、そうですか…。失礼しました…」

薫瑠さんは、私に頭を下げた。

「え?!ちょっ、大丈夫ですよ!な、慣れてますから!頭を上げてください!」

「いや、本気で間違えてしまったので…。本当に、失礼でした……。見かけで、判断してしまい……。本当に失礼しました…」

薫瑠さんは、自分をドンドン責めていく。

「大丈夫ですよ!」

「……ありがとうございます……。……あの、優さんは、どこの高校に通うんですか?」

「夜鬼学園です」

ニコッと、薫瑠さんの問いかけに。笑顔で答えた。

「あ、じゃあ俺と同じ高校ですね。今年、よろしくお願いしますね。優さん…」

「はい!よろしくお願いします!」

「でも……、変な人に優さんが絡まれないか心配ですね……」

「全然大丈夫です!」

私は、薫瑠さんに心配かけないために、笑顔で答えた。

「そうだと良いんですけど……」

薫瑠さんは、まだ心配をしてくれた。

うーん……、どうしよう……。

「………………」

「せめて、同い年の三人がちゃんとしてくれると助かるんですが……」

はぁ………、と薫瑠さんが、ため息をついた。

「大丈夫です。愛希君も、翔君も、裕君も。皆、優しいですから」

「……………、本当ですか?」

薫瑠さんは、目を見開いて、ビックリしながら聞いてきた。

「はい!」

「……ふふっ……。なら、ちょっと安心しました」

薫瑠さんは、優しく微笑んだ。私も、微笑みかえす。
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