私、ヴァンパイアの玩具になりました

着替え終わった後、私はクルリと全身うつせる鏡の前で一回転する。

「……ヒドいな…。似合わなすぎる……」

普通の可愛い女の子なら、嫌々着ても、実は凄い似合う！的な展開だけど。

…私の場合、顔子供だし。そのまえに、身体も子供だしな……。

「ＢＣ優さーん？…まだですかー？」

日向さんの不機嫌な声が、ドア越しに聞こえてくる。

「ぇっと、まだです！」

これは、日向さんの目が腐ってしまう！

「じゃあ、入りますねー！」

え、ええええ？！なにが、じゃあ、なんですか？！

私の疑問を無視するかのように。ガチャッと、鍵を掛けたはずのドアが開いた。

あ、あれ？鍵、掛け忘れた？！さすが私！バカ発動していたようです！

「………着替え終わってるじゃないですか？なんで、嘘ついたんですか？」

「……ごめんなさい……」

だっえ、はぶかしい！あんりょ、いひゃなんでひゅもん！

ゴホンッ…。すいません。パニックになりました。

「……思ったより似合ってませんね。面白い位に」

ピラッと、日向さんは、私のスカートをめくろうとする。

私は、それを死備した。

「それって、言わなくてもいい事ですよね……」

少し疲れたので、呼吸を整える。

私は、恥ずかしさと悲しさの気持ち一杯で、泣きそうです。

「素直に、そうですねとでも、言ったらどうですか？」

「そうですね……」

「本当にＢＣ優さんは、素直じゃないですね。バカなら、素直になったらどうですか？」

「ごめんなさい……」

なんで、風邪が治ったと思ったら、日向さんに説教されてるの……？

「まぁ、良いです。次は、ナース服ですよ」

「………は」

私が、返事をする途中で、脱衣場のドアが開いた。

「………何しているんですか？」

そこには、薫瑠さんが、ビックリした顔で。私と日向さんの２人を交互に見ていた。

「あれ？薫瑠。…何してるって、コスプレプレイ」

「……日向。優さんは、病み上がりなんですから、そんな薄着にさせないで下さい」

そう言って、薫瑠さんは、着ていたスーツの上着を、私の肩にかけてくれた。

紅茶の甘い香りが、私の体を包み込んだ。

「………へいへーい」

日向さんは、反省の色を見せないで、ナース服を持って脱衣場から出て行く。

「大丈夫ですか？…寒気とか、しないですか？」

薫瑠さんは、私と視線を合わせるために、膝立ちすると、心配そうに顔をのぞきこむ。

「はい。大丈夫です。…薫瑠さん、ありがとうございました」

「いえ、当たり前のことをしただけです。…でも、日向の事は嫌いにならないであげて下さい。…あんな日向でも、優しい時がありますから」

ニコッと、薫瑠さんは優しい笑顔を浮かべた。

「……はい。頑張ります…」

…日向さん、絶対私が嫌いですもん。だから、これ以上嫌われないように頑張ろう…。

「…日向は、人にどうやって優しくすれば良いのか、人より少し分からないってだけです」

「……そうなんですか？」

「はい。…母親も早くに亡くし。俺達、兄弟は母親の顔も覚えてません。…写真はありますけど……」

…薫瑠さんは、寂しそうに笑うと、優しく私の頭を撫でてくれた。

「そうだったんですか……」

「…優さんのご家族は、どんな方達なのですか？」

ギクッと、私の体が嫌なほど分かりやすく震えた。

でも、薫瑠さんも言ってくれたんだから…。私も、言わないと…。

「…あの……。…私、両親いないんです…」

一瞬、２人の空気が重くなる。

私は、この空気が一番嫌いなんだよね。…別に、悲しくもないと言ったら嘘になるけど。…無駄な親切はいらない…から。

「……あ、そうでしたか……。…俺達と同じですね。優さん」

「へ？！」

言われたこともない返答に、思わずビックリしてしまう。