私、ヴァンパイアの玩具になりました
リビングの大きな出入り口のドアをあけると、綺麗なシャンデリアが天井で光っていた。

昨日も見たけど、やっぱり…迫力が凄い…。

「…あ、優さん。…もう、用意が出来ているから、席に座ってなさい。…ご飯は、運んでもらうからね」

私と薫瑠さんが、リビングに着くと、まだおじさんしかいなかった。

おじさんは綺麗なスーツを着こなして、一番奥の席に座っていた。おじさんの前には、私達の席が二列になって、並んでいた。

「あ、はい……。あの、みな…」

「もう少しで、来るよ?大丈夫だよ。…優さんが居るなら、あの子達は全員リビングでご飯を食べようとするからね」

「そうなんですか?」

「あぁ……。あの子達は優さんの事気に入っているからね」

おじさんが、ニコッと笑う。

「へ?!そ、そんな事ないですよ!」

だ、だって、私、バカだし…。胸小さいし…、アホだし…。

うん……、自分で言って落ち込んできた…。

「いや、そんな事あるんだよ…。優さんのお陰で、あの子達も少しずつ変わってきてるよ」

ありがとう、とおじさんが目を細めて笑った。

「いえ?!そんな、私なんて…。その、お礼を言われる立場どころか、私がお礼を言う立場なんです…けど……」

私が、オドオドと話していると、リビングに嶺美さんが仏頂面で入ってきた。

「嶺美、どうした?なんで、無愛想なんだ?…あ、いつもの事だったな」

おじさんが、一人でアハハハ、と笑う。嶺美さんは、そんなおじさんを無視するようにして、私に近付く。

「おい、バカ」

「え、ぁ、はぃ………?」

あ、あれ?バカって、私だよね?…私しかいないか…。

「……お前、なんで日向に変な服着せられてんだよ。本気のバカだな……」

「………………へ?」

私が、マヌケな声を出すと、嶺美さんはケータイを出して、私にある写真を見せた。

画面に写っていたのは、私がついさっきまで着ていたメイド服姿の私だった。

「……………え?!」

私は、思わず嶺美さんの顔をガン見してしまう。

「日向から送られてきたんだよ。バカ。何やってるんだよ。アホ。もっと病み上がりっていう自覚持て。ボケ」

「……は、はぃぃ……………」

れ、嶺美さんが何故か凄い怒ってるよー………。

「本当に…これだから、バカ女は……。…あ?」

嶺美さんが、怒りながら携帯を見ていると、誰かが嶺美さんの携帯を後ろから奪う。

「…………、………おい。嶺美。バカ日向呼んでこい……」

その誰か、というのは、おじさんだった。

「………嫌だ。アイツと話したくない」

嶺美さんは、おじさんから携帯を取り返して、ズボンのポケットの中にいれた。

「……はぁ……。…薫瑠、呼んできてくれないか?」

「…分かりました。呼んできますね」

薫瑠さんは、おじさんの頼み事に笑顔で引き受けて、リビングから出て行った。

「…本当に、あのバカが……。……申し訳ないね。優さん…。あのバカ息子が…」

「………ぃ、いえ…」

おじさんは、笑いながら私に謝ってくれた。けれど、手がブルブルと震えて怒りを露わにしていた。

「ていうか、なにすんなり言うこと聞いてんだよ。バカじゃねぇの?」

嶺美さんは、ガタンッと音をたてて真ん中の席に座った。

「…ご、ごめんなさい……」

私は、視線を泳がせながら、嶺美さんに謝った。

……やっぱり、私が悪いんだよね…。…私がもっと、強い女の子だったら…。


「こら!嶺美!優さんのドコが悪いんだ!悪いのは、日向だ!」

「ん?父さん、呼んだ?」

「「「………………」」」

おじさんが、嶺美さんに怒鳴った時。リビングの入り口から、ニコニコ微笑んでいる薫瑠さんと、手と体を縄で固定して縛られた日向さんが、ケロッと、した顔で現れた。

意味の分からない状況に、私達三人は思わず二人のことを見たまま固まってしまう。
< 47 / 122 >

この作品をシェア

pagetop