私、ヴァンパイアの玩具になりました
「…………KY…」

嶺美さんが、藍さんに向かってボソッと呟いた。

「あぁ?!今、なんつった!?」

藍さんは、嶺美さんの方に歩み寄る。

「KY、って言った」

嶺美さんは、冷たく藍さんに答えた。

「んだと?!なんでだよ!!俺がいつ、KYなことしたんだよ!!」

「はぁ……。今なんだよ、藍」

興奮する藍さんの頭を軽くおじさんが叩く。

「…なんで、何もしてない俺が叩かれないといけねぇんだよ!」

「…はぁ…………」

キレている藍さんのことを、おじさんは見た。すると、おじさんは溜め息を吐いて、自分の席、奥の席に戻っていった。

「はぁ?なんだよ、あれ……。意味分んねぇ…」

藍さんは、チッと舌打ちをすると、ガタンと右側の真ん中の椅子を引き、ドカッと座った。

「…えーと、後は愛希と翔と裕だね。…末っ子三人組ー」

日向さんが、ニコニコ笑いながら歩いて、おじさんの斜め右横に座る。

「…まぁ、あの三人が遅いのは、いつものことですからね。今日もケンカしてやってくるんじゃないですか?」

薫瑠さんが、日向さんの向かい合わせの席に座った。

「…そのせいで、ご飯がいつも遅れる…。凄い迷惑……」

嶺美さんは、ヘッドホンを首にかけると、ふわぁ…と欠伸をした。

「あの、私は…。どこですか?」

多分、ケンカしないで席に座るってことは、席の位置が決まっている…ってことだよね…?

「ん?優さんはね、裕の向かい合わせの所だよ」

おじさんが、一番おじさんから遠い席の右側の席をスッと手を私に教えるように伸ばす。

「あ、分かりました…。こ…」

私が、おじさんに確認を取ろうとするとき、リビングの出入り口のドアが、荒々しくバンッと開いた。

「あー、もー!リビングに入るときに、三人一緒にこないでよ!聞いてる?!」

「翔、うるさい!…あー!本当にウザい!ちょっと、愛希!近寄らないで!!」

「はぁ?!裕から近寄って来てるじゃん!頭、どうしたの?」

「「「……………………」」」

あまりにもヒドいケンカに、皆が三人をただ見ていることしか出来ないでいた。

「コラコラ、なんでそんなにケンカしているの?」

そんなケンカの仲裁に入っていったのは、おちゃらけている日向さんだった。

「「「誰が優の隣の席に座るかで!」」」

三人はハモって言い終わると、髪の毛を引っ張ったり、頬を抓ったりしていた。

…そ、そんなに私の隣は嫌なんですか?!…ケンカするぐらい私のことが嫌いなんですか?!

凄い…ショックです……。さすがに、ここまで分かりやすく嫌がられると…傷つきます……。

「…あの、そんなに…私の隣が嫌なら…。私、一人でご飯食べてきます…」

「「「は?」」」

私が、俯きながら呟くと、三人がまたまたハモる。私は、ちょっとだけ顔をあげると、皆さんがビックリした顔で私のことを見ていた。
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