私、ヴァンパイアの玩具になりました
「翔、嘘ついてたら、もうお風呂一緒にはいってあげないからね」

日向さんが、翔君の顔をジーッと見つめる。

「嘘じゃないから!うん!全然、嘘じゃないからね!」

翔君は、それは嫌だ!みたいな雰囲気で、日向さんの腕を掴む。

って……、今も一緒にお風呂入ってるんですね……。

もしかして、私が思っている以上に、二人って仲良いのかな?

「……ふーん…。BC優さん、あなたも嘘ついてたら、血飲み干して殺しますからね」

日向さんは、少し、私の方に怖い視線を向けてから。自分の席に戻っていった。

「…は、ははい…」

私は、聞こえるか聞こえないかの間の声で、返事を返す。

あ、変な返事しちゃった…。だ、だって!怖いんですもん!なんで、私だけ殺されるのですか?!

「……で?誰が、BC優さんの隣になったの?ていうか、いつも通り座りなよ」

日向さんは、面倒くさそうに、ふわぁ…と欠伸をした。

「えー。日向兄ちゃん、それは無いよー…。僕、一生優の隣どころか近くにもなれないよ…」

翔君が、ふくれっ面になる。裕君と愛希君は、満足そうに席に座った。

「翔、良いからいつも通り座りなさい」

おじさんは、涙目になっている翔君に、溜息混じりに、指示をした。

翔君は、頬を膨らませると、いじけて私の斜め右前に座った。

因みに、私の右隣は愛希君。前は裕君。

「なんで、僕が……」

翔君は、ぶつぶつと文句をこぼしていた。

「……翔、諦めなよ…」

裕君が、呆れ半分で翔君の方に視線を向ける。

「あーあ…。僕が、もう少し遅く産まれてたらなー……。今頃、優の隣だったのに…」

翔君は、ジーッと愛希君の方を見ていた。愛希君は、翔君と目が合うと、鼻で笑った。

そんな愛希君に、カチンっときたのか、翔君が机をバンッと叩く。

「愛希、超ムカつく!今、殺しにいくから!」

翔君が、そう言うと、椅子から立ち上がり、愛希君に近付く。

「は?…返り討ちにしてあげるよ」

翔君が、ガッと愛希君の胸ぐらを掴むと、翔君は愛希君の首に牙を刺した。

「…………っ…、……んっ…」

愛希君は、やり返すように、翔君の首に思い切り牙を当てる。

「あ、あぁあの…、ケンカは…」

私は、椅子から立ち上がって、二人に近寄るけど、裕君が慌てて私の腕を引っ張る。

「優、危険だから近寄っちゃダメだよ」

「……でも…」

そうしているうちにも、二人のケンカはヒートアップしていく。

「お前達!ヤメなさい!」

そんな二人のケンカにしびれを切らしたおじさんが、机を思い切り叩くと、ズカズカと二人に近寄る。

…ヴァンパイア同士のケンカは、普通のケンカより怖い…です……。

二人の首からは、大量の血が流れていた。

「いい加減にしなさい!…薫瑠!日向!手伝いなさい!」

おじさんが、何度も二人を引き剥がそうするけれど、二人のケンカは止まらなかった。

おじさんは、薫瑠さんと日向さんに助けを求めると、薫瑠さんは愛希君の腕を引っ張って。日向さんは、翔君の腕を引っ張った。

「離せ!薫瑠、離せ!」

「日向兄ちゃん、離して!」

愛希君と翔君は、薫瑠さんと日向さんの腕の中で暴れる。

「「いい加減にしなさい!」」

薫瑠さんと日向さんが、怒鳴ると。愛希君と翔君が、静かになる。
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