私、ヴァンパイアの玩具になりました
「ほら、翔。首、消毒してあげるから、行くよ」

「愛希もですよ。行きますよ」

「「……………うん」」

日向さんは、翔君の手を掴むとリビングから出て行く。それについて行くように、薫瑠さんと愛希君はリビングから出て行った。

四人がいなくなると、さっきまで騒がしかったリビングが、急に静かになった。

二人がケンカしたのは、私のせいなのかな…?私が、おじさんの隣に行ってれば良かったんだよね…。

でも、今頃後悔しても遅い…。二人は、首にケガをしちゃって。現に、空気も重い。

全部、あれもこれも。私のせいだ。

「あの、ごめんなさ…」

「……優さん、これは優さんのせいじゃない。私の教育が悪いから」

私が、謝ろうとしたら、おじさんが溜息を吐いて、力無く笑った。

「そんな…」

「…あのな、お前が気にすることないって、親父が言ってんだよ」

私が、オロオロしていると。藍さんが、頭をかいて、私へと視線を向けた。

「……でも………」

「お前が心配するようなケンカじゃねぇよ。…あれ以上に酷いときなんて、何回もあんだよ」

本当の殺し合いみたいなことも、あったしな、と藍さんが付け足しする。

「…………………」

でも…、やっぱり……。

「おい、優。気にすんなって言ってんだろ」

藍さんは、私と視線を合わせながら真剣な顔付きで言った。

「…………はい…」

私は、返事をすると、さっきの席に腰をおろした。

「……はぁ…。お腹空いたんだけど…」

さっきまで静かだった嶺美さんが、ボソッと文句を呟く。

「あの子達がケンカをしなくなるのは、いつになるんだろうかね…」

おじさんは、そう言って、溜息を吐くと力無く笑った。

「…無理でしょ」

裕君は、ふぅ…、と息を吐く。

おじさんは、また力無く笑うと、椅子から立ち上がった。そして、リビングのドアまで歩いていき、ニコッと微笑むと。

「四人は、多分、遅くなるだろう…。ご飯を先に食べてようじゃないか。…今、執事とメイドを呼んでくるよ。…少しばかり待っててくれ」

そう言って、おじさんはリビングから出て行った。

私は、落ち着かなくて、手を動かしたり、視線を動かしたりとしていた。

「優、ちょっと落ち着きなよ…」

そんな私を見て、裕君が苦笑いをする。

「ご、ごめんなさい……」

私が、謝ると裕君がニコッと微笑んだ。

「謝ることじゃないのに」

「ごめんなさい…」

私が、また謝ると裕君は俯いてクスクス笑った。そして、顔をあげると、一瞬動きが止まる。

「……あれ?そのネックレス…」

裕君は、私の首もとのネックレスを見て、首を傾げる。

「あ、これですか?…このネックレスはですね。昨日、不思議な人と出逢ったんです。…夜、ベットで寝てたら、藍さんに似ている人に貰ったんです」

私は、十字架の飾りを触って、藍さんに視線を向けて微笑んだ。

「…な、なんだよ」

藍さんは、私と目が合うと、急に焦り出す。

「いえ。なんでもありません」

ニコッと、私は笑う。藍さんは、暑いのか顔を赤くして、私のことを睨む。

「…んだよ、バカ」

「…ふふっ……。なんでありませんよ」

私が、笑って数秒後に、リビングのドアが開いた。

私は、おじさんだと思ったけれど、違った。首に大きなガーゼをテープでとめている愛希君と翔君。その後ろに、薫瑠さんと日向さん。

「「………………」」

愛希君と翔君は、さっきのケンカが嘘のように、静かに席に座った。

「あ、そうそう。…父さんが、もう少し待ってて、と言ってましたよ」

日向さんが、私と目が合うとニコッと微笑んだ。

「あ、はい…。分かりました…」

私は、苦笑いで返事をすると、俯いて手を見ていた。
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