私、ヴァンパイアの玩具になりました
「「……………」」

く、空気が重い……。どうしよう…、なにか話さないと…。

「あの…」

「無理に話さなくていいよ」

私が、口を開くと、愛希君が私の隣で冷たく言い放つ。

「ご、ごめんなさい……」

「…………………」

愛希君は、私を無視して、首もとを触る。

…火に油…って感じですね……。

また私のせいで、もっと空気が重くなっちゃった……。

本当に、救いようのないバカですね。私……。

「…………………」

はぁ……。…藍さんは、何回もある、って言っているけど…。

こういう空気、バカな私なりに苦手なんです…。

私が、落ち込みながら俯いていると、リビングのドアが開く。すると、リビングのドアから数人の執事さんとメイドさんが料理を運んで来た。

おじさんは、最後に入ってきて、椅子に座った。

執事さんとメイドさんは、私達の前にご飯を置いてくれた。

あ、…すごい美味しそう…。それに…、すごい豪華だな…、飾り一つ一つが丁寧だし。

「あ、ありがとうございます…」

私が、笑顔でお礼を言うと、執事さんとメイドさんは、私にお辞儀をする。

「…ほら、手を合わそうじゃないか……」

おじさんは、そう言うと手を合わせて、目を瞑る。それに続くように、私達は手を合わせて、目を瞑った。

「…いただきます」

「「いただきます」」

「い、いただきます…」

…私だけ、なんかズレちゃった…。

と、私の恥ずかしい気持ちも知らずに、皆さんは、ご飯を静かに食べていく。

チラッと、横目で皆さんの食べている姿を見ると。とても綺麗にご飯を食べていた。

「…………………」

すごい…、私、こんなに綺麗に食べれないよ…。ナイフがなんで三個も?外側?内側?それとも、真ん中を使うの?

「……外側からだよ」

私が、どうしよう…、と悩んでいると、愛希君が、私の手を掴んで、外側のナイフまで持っていく。

「…ありがとうございます」

「…別に……」

愛希君は、素っ気なく私に返すと、前に向き直って、ご飯を食べ続けた。

私は、もう一度、心の中で、いただきます、と言って外側のナイフを取り、フォークを逆の手で持って、ステーキを切ろうとすると。

「そういえば、優さん。もう少しで、春休みが終わるけど、制服はどこに置いておけば良いかな」

おじさんが、私と視線を合わせると、ニコッと微笑んだ。

「あ、えっと…。私の部屋に置いてある、大きなクローゼットに掛けていただければ…」

もしかして、合格して、すぐに買った制服が、届くのかな?…学園の制服、可愛かったんだよな…。着るのが、楽しみ…!

「分かったよ。じゃあ、今日は制服のサイズを測ろうじゃないか。…ご飯を食べ終わった後、メイド達にしてもらうといい」

え?え……?おばさんと、一緒に買いに行った制服じゃないの…かな……?

私が、頭の中で、色々考えていると、日向さんが、おじさんに話しかける。

「……父さん、僕がBC優さんのサイズを測ってあげるよ。…奥の奥までね」

日向さんが、私の方に視線を向けると、ニヤリと笑う。私の体は、ビクッッと震える。

「お前は、私の部屋で五時間正座の罰って言ったじゃないか」

おじさんは、日向さんの頭を、ベシッと叩いた。

「えー………。父さんの、イジワルー」

日向さんは、頭を押さえながら、ブーブー、と口を尖らせる。そんな日向さんを無視して、おじさんはご飯を口に含んだ。

「あ、あの…。…せ、制服…は…良いです…。あの、もう頼んで……」

「それがね、優さん。ついさっき、学園から連絡があったんだよ。今年から、ヴァンパイアと人間の区別がつくように、人間の制服だけ、ブレザーに薔薇の模様をつけることになったんだ」

おじさんは、自分の左胸をトントンと人差し指で叩く。

「そうなんですか?」

だから、さっき、ちょっと遅くなるって、日向さんに伝言したのかな…。

「あぁ。…だけど、安心しなさい。お金は、返金されるみたいだ。…それに今頃、優さんが前、住んでいたおばさんの家にお金が戻ってきてる頃だよ」

だから、安心しなさい、とおじさんは言葉を続けた。

「…そうですか……、あれ?でも、やっぱり、お金がかかります…。制服の分だけでも、お金は出さないと…」

「いいよ、いいよ。息子達のお世話をしてもらっているんだからね。そのお礼ってことで、制服を受け取ってくれると、私は嬉しいよ」

ね?だから、受け取ってくれるかい?と、おじさんが優しく私に言ってくれた。

私は、少しの間考えてから、弱々しく首を縦にふった。
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