私、ヴァンパイアの玩具になりました
「お世話って言うほど、お世話してもらってないけどね」

日向さんは、不満そうに私に視線を向ける。

「ご、ごめんなさい…」

私は、日向さんに申し訳無さそうに謝る。

「謝る暇があるなら、お世話してくださいよ。ヴァンパイアが喜ぶお世話くらい、分かりますよね?」

ヴァンパイアが…喜ぶお世話…。

バカな私でさえ、分かる。

「ニンニクとかから、守る…ことです!!」

私が、自信満々に答えると、リビングに笑いの渦が巻き起こる。

「……ブッ…、ニンニク……。クッ…」

「ハハッ…、ニンニク…」

「優、最高だよ!その答え!」

「ふふっ…、ニンニクからですか…」

「優、バカみたい…。クスクス…」

「あはは!優、凄いね」

「さすが、BC優さん」

藍さん、嶺美さん、翔君、薫瑠さん、愛希君、裕君、日向さんが、発言をしていくと、皆は涙を流しながら笑う。

「こら!優さんに、失礼じゃないか!真剣に、考えてくれたんだぞ!」

おじさんが、私に気をつかって、皆さんに怒鳴った。でも、結構なツボに入ったらしく、皆さんの笑いは止まる気配がない。

「…うぅ………」

は、恥ずかしいよ…。

「ははっ…。それに、ニンニクが嫌いなヴァンパイアは、結構弱い奴なんですよ?それに、十字架もきかないですしね…。…BC優さんが、つけてるネックレスも、弱者にしか効きませんよ」

日向さんは、目から涙を流しながら、私の十字架ネックレスを指差した。

「そうなんですか?…でも、優しい人から貰ったので。外す予定はないです」

私は、飾りの十字架を触って、微笑んだ。

「ふーん…、いつ貰ったんですか?初めて会った時は、付けてませんでしたよね?」

日向さんは、飲み物を一口飲むと、私に質問を投げかけた。

「…え…っと……」

これって、言ってもいいのかな?…藍さんもどきさんの許可もらってないし…。

「なんですか?言えない理由でも、あるんですか?」

「…いえ……、その。それが、知らない方から、貰ったんです」

日向さんの鋭い視線に負け、私は、一言一言に、少し時間をかけて話していく。

「…知らない人から?なんで、貰ったんですか?」

日向さんは、答える度に、私にどんどんと質問をしていく。

「えっと、知らない方に、これを付けてたら、大体のヴァンパイアは近付かない、と言われて…」

日向さんの声が、少し怖くて私の声は段々と小さくなっていく。

「多分、その大体のヴァンパイアっていうのは、…僕達からしたら、弱者のヴァンパイアにしか効かないって事ですよ」

日向さんは、小さなお肉をフォークで刺して口に含んだ。

「…そうなんですか……」

でも、折角、私の為にくれたネックレスだもん。例え、効果がないとしても大事にしたい…。

「…日向、余計なことは言わなくていい。優さんは、随分、その可愛いネックレスを気に入っているんだ。それだけで、いいじゃないか」

ね?優さん、とおじさんが微笑みかけた。

「はい!凄い気に入っています」

私は、おじさんの言ったことに首を縦にふった。

「それに。…そのネックレスは大事にしておいた方がいい。ネックレスをあげた人は、優さんを本当に大切に思っているだろうから、付けていたら喜ぶんじゃないかね」

「……はい」

私は、十字架を優しく握り締めながら、微笑んだ。

「…そんな効果もないやつ付けて、何がいいんでしょうね」

日向さんは、何故か怒り口調で言うと、ご飯を食べていく。
< 54 / 122 >

この作品をシェア

pagetop