私、ヴァンパイアの玩具になりました
「本当に、その素直じゃない性格は誰に似たんだかね…」

おじさんは、苦笑いのまま日向さんのことを見た。

「一応父さんー」

日向さんは、テーブルの下で長い脚をまたバタバタとさせていた。

「父さんは、お前より素直だよ」

「それは無いよー。僕、父さん似だからね」

日向さんは、僕と似れて感謝してね、とおじさんに言った。

「お前と一緒にして欲しくないね」

おじさんは、優しい笑みとは真逆に、日向さんに冷たく言い放った。

「父さん、酷いー。さすがの僕でも、泣いちゃうよー」

日向さんは、ニコニコしながら言う。

泣きそうには、見えません…けど…。

「僕は、日向兄ちゃんと一緒になりたいよ!」

翔君が、急に笑顔で手を挙げた。その発言に、藍さんが顔を歪ませて。

「趣味悪いのにも、程があるだろ。翔、お前、目可笑しいんじゃねぇの?…いや、頭か…」

「えー…。日向兄ちゃん、格好いいよ?優しいし!」

僕、日向兄ちゃん大好き!と、翔君は目を輝かせる。そんな翔君を見て、藍さんは顔を引きつらせていた。

「ありがとう、翔。…後、藍。そんなに僕が好きなら、ツンツンしないでいいよ」

「お前なんか大嫌いだっつの。変態」

藍さんは、本当に嫌な顔をしてから、日向さんにベーと舌をだす。

「もー、ツンツンしちゃって。素直じゃないんだから。本当は、僕が大好きなんだもんね」

日向さんは、大きな器なのか、ヘラヘラとして怒る気配が少しもなかった。

「これが、俺の素直な気持ちなんだよ!」

藍さんは、大声で日向さんの発言を否定する。

「またまたー。もー、藍はツンデレなんだから!小さい頃から変わらずに可愛いねー」

「うる…」

「…いい加減、くだらない言い合いやめろよ。お前らといるだけでもメシがマズくなるんだから、少しは静かにしろよ」

藍さんが、日向さんに怒鳴ろうとすると、嶺美さんがコップをバンッと机に荒々しく置いた。

「こら!嶺美!なんてこと言うんだ!謝りなさい!」

嶺美さんは、ウザったそうに、頭をガシガシッとかいた。

「本当のこと言っただけだろ。それともなんだよ。アンタは、コイツらなんかとメシ食べて楽しいのかよ」

「親に向かってなんだ!その口のきき方は!」

嶺美さんの発言に、おじさんは怒る。

私は、その場の空気にただ、静かに黙っていることしか出来なかった。

「ウザ…、もう食わねぇ」

バンッと嶺美さんは、机を叩きリビングから荒々しく出て行った。

「「「………………」」」

シーンと静かになったリビングで、私は俯いたまま。
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