私、ヴァンパイアの玩具になりました
「コイツといたら、仕事が増えそうだな」 

嶺美さんが、溜息混じりで話した。

「ごめんなさい……」

私は、嶺美さんに謝ると、嶺美さんは何も言わずに、ただ紅茶を飲んだ。

「嶺美、優さんにケガがなかっただけで、もう良いじゃないですか。……それに、優さんはワザとでは、ないんですからね」

薫瑠さんは、私の紅茶を少し足してくれる。

「ワザとだったら殺してる」

「わ、ワザとじゃないです…」

私は、精一杯の勇気を振り絞って、小さな声で誤解を解く。

「冗談だっつの。ただ、殺すより痛ぇことするだけだ」

嶺美さんが、そう言うと薫瑠さんが、嶺美さんの頭をコツンと軽く叩いた。

もう、ここに来てから冗談らしいのが、冗談に聞こえないよ…。

「嶺美、もう優さんをからかうのはヤメなさい。優さんが可哀想です」

薫瑠さんは、少し足した紅茶を私に差し出した。

私は薫瑠さんから紅茶を受け取ると、お礼を言って、フーフーしてから紅茶をゆっくり飲む。

…薫瑠さんからしたら、今までのは、からかいに見えたんですか………。

紅茶を飲みながら、少し悲しくなった私。

「…そういえば、優さんは、なんで夜鬼学園に受験しようと思ったんですか?」

薫瑠さんが、紅茶を飲んでいて、途中なにかに気づいたかのように私に質問をした。

「…えっと、お金の事情もあって。夜鬼学園は、授業料がタダということで…。…それに食堂のご飯がタダと聞いて…。…おばさんに迷惑かけたくなくて…、受験しました……」

私が、ぼそぼそっと呟くように話すと、嶺美さんが。

「でも、一般ではいるには、成績が良くなきゃダメって聞いたんだけど。お前、バカじゃねぇの?…俺達、ヴァンパイアは、筆記試験受けなくてもはいれるけど…」

嶺美さんが、私をバカにするような口調で聞いてくる。

あ、バカにしてる口調で聞いてくる、でした。

「えっと、……私、中学三年間、五教科…。オール五です」

「「ぶっ……………」」

私が言いづらそうに言うと、薫瑠さんと嶺美さんは紅茶を噴き出して咳き込んだ。

「ゴホゴホッ……、おま…。それで?!お前、そんなノホホンとしてバカみたいな顔でオール五だったのか?!」

「……はい…」

嶺美さんは、本当にビックリしたようで、目を見開いていた。

うぅ……、いくら何でも…酷いです……。

「ゆ、優さん、凄いですね…。俺、ビックリしました…」

薫瑠さんは、まだビックリしてる顔で力なくニコッと微笑んだ。

「い、いえ。おばさんに教えてもらったお陰です…。私の実力じゃないですから……」

私は、紅茶のカップで顔を隠すようにして、話していく。

おばさん、勉強教えるの凄い上手だったから。…勉強をするのが楽しくて好きになれた……。

「それでも全然凄いですよ」

薫瑠さんは、口角をあげて褒めてくれた。

「でも、普通よ。人間は塾とかいう所に行って、成績をあげるんだろ?…行ったことないのか?」

嶺美さんは、紅茶を足しながら聞いてきた。

「塾などにお金を使うより、おばさんは私の生活に必要な洋服とか…買ってくれました。…塾には行ったことありません……」

分からないところは、おばさんが優しく丁寧に教えてくれたから。

塾に行く必要も、お金もなかった。

「人は見かけによらず、だな……」

嶺美さんは、未だにビックリした顔で言葉をもらすと、紅茶を飲んだ。
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