私、ヴァンパイアの玩具になりました
「日向、お前は本当に余計な事しか言えないのか!!」

「え?僕がいつ、余計な事を言ったの?」

日向さんが言った言葉に、私が落ち込んでいると、日向さんはおじさんに怒鳴られる。

「本当にお前って奴は…!!」

「んー、お腹空い……。……あ、お取り込み中?」

日向さんの問いかけに、おじさんが怒ろうとした時、リビングの扉が開き、腕を伸ばし欠伸しながら裕君が入ってきた。

「優、おはよー」

「あ、おはようございます。裕君」

私が笑顔で挨拶をすると、裕君は満足そうに笑って椅子に腰を下ろす。


裕君は、Yシャツのボタンを第二ボタンまで、しめていた。

そして、皆さんと違って、頭に白いウサギの手のひらサイズ位しかない小さなぬいぐるみを乗っけていて。

裕君は、白いネクタイを手首にリボン結びをしてつけて、ブレスレットみたいにしていた。

「……はぁ………、……もう良い…」

おじさんは、日向さんを怒るのが面倒になったのか溜息を吐いて椅子に座る。

おじさんが、溜息を吐くと嶺美さんが丁度、リビングに入ってきた。

「おはようございます。嶺美さん」

「…………あぁ…」

私が挨拶をすると、嶺美さんは適当に返事を返してくれた。

嶺美さんは、面倒くさいのか、Yシャツのボタンを下から五個目までしかボタンをしめていなくて。

緑色のネクタイを、藍さんとは逆の位置にズボンのベルトの所にチョコンとリボン結びをしていた。

「………ご飯、まだ?」

嶺美さんは、少し不機嫌におじさんに聞いていた。

おじさんは、後もう少しだ、と言って飲み物を飲み干した。

「薫瑠兄ちゃんと愛希遅いなー」

翔君が、口を尖らせながら、ブーブー言っていると、ちょうど同時に二人がリビングに入ってきた。

「遅れてすいません。…愛希を起こしていました」

「…ふわぁ……」

薫瑠さんは、リビングに入るなり、頭を下げて遅れた事を謝った。

愛希君は、欠伸をしながらゆっくりと席についた。


薫瑠さんは、やっぱりピシッと制服を着ていて。Yシャツは第一ボタンまで、しっかりとしめていて。

赤い紐じょうのネクタイを、胸ポケットにいれて、少し出していた。

愛希君は、白い紐をYシャツの襟元にいれてるだけで縛ってはいなかった。

胸ポケットからは、ギラリと光るフォークが入っていた。


あのフォークで、なにをするつもりなんだろう……?

「…薫瑠、頭を下げる必要はない。気にせず、席につきなさい」

「………すいません」

おじさんは、薫瑠さんに優しく微笑んだ。薫瑠さんは、もう一度謝ると席についた。

「…お腹空いた」

愛希君は、眠たそうにボソッと呟く。

「後もう少しで来るだろう」

おじさんは、リビングのドアに視線を向けながら言う。

私も、そろそろお腹が空きました…。

「ていうかさぁー、愛希が早く起きれば良い話じゃん。待たされている僕らの身にもなってよね!!」

「は?」

このまま平和にご飯が食べれると思ったのに、裕君の言葉に愛希君は機嫌を悪くする。

「そんなに朝起きれないなら、夜の7時とかに寝れば?」

「裕と違って、僕は忙しいからやることが沢山あるだけ。裕は暇だから早く寝れるんでしょ。…良いな、暇人は早く寝れて」

裕君の嫌みに負けずに、愛希君は裕君に嫌みを言い返す。

………ま、またケンカですか…?

「愛希、裕、ケンカをここでするなら、ご飯抜きにするぞ」

私が冷や冷やしていると、おじさんは低い声で愛希君と裕君に怒った。

「「……………………」」

おじさんの言葉がきいたのか、二人は短い溜息をついて、ケンカをヤメる。

……ふぅ…、良かった…。また、あの血だらけなことになったりしたら、大変だから…。

「……さん!……優さん!!」

「ふぁ、…ふぁい!!」

私がゴタゴタと頭の中で考えていると、おじさんが私の名前を呼んでいた。

……へ、変な返事しちゃった…。

「早くご飯食べないと、遅刻してしまうよ?」

「へ?!」

テーブルを見ると、私の前には朝ご飯が並んでいた。

あ、もう朝ご飯きてたんですか!?気づかなかったです…。

周りを見渡すと、皆さんは手を動かして朝ご飯を食べていた。

「い、いただきます!!」

私は、急いで手を合わせると、ご飯に手をつけ始めた。

おじさんの言うとおり、早く食べないと!!

私は、朝ご飯を味わう暇もなく、パクパクとご飯を口に含んでいった。
< 71 / 122 >

この作品をシェア

pagetop