私、ヴァンパイアの玩具になりました



朝ご飯を食べ終わった私は、歯を磨いて学園に必要な物を持ってから、皆さんより少し遅れてから家を出ました。

急いで、学園に向かおうと門を出ると。

門の外には、大きくて黒い車が。

後ろのドアが開いていて、近寄って見ると裕君が座っているのが見えた。

裕君は、私の存在に気づくとニコッと笑う。

「優!!早く乗って!!遅れるよ!!」

の、乗っていいんですか?…というか、待たせていましたよね…絶対…。

先に行ってるかと思っていました…。

「…え?………す、すいません!!……きゃっ……」

裕君は、私の手首を引っ張り無理矢理車の中にいれる。

私が車の中にちゃんとはいると、ドアは勝手に閉まって。落ち着いてから、車の中を見渡すと皆さんはすでに乗っていた。

「優、遅い」

「…すいません」

裕君の隣に座ると、私の向かいに座っている不機嫌な愛希君に怒られる。

愛希君は、私を睨みつけていた。そんな愛希君に、私はビクビクして俯いた。

「………………?!」

「愛希だって、朝起きるの遅かったじゃん。優を責める資格ないよ!」

裕君は、私の肩を抱き寄せて、愛希君を指差して私を庇ってくれる。

「…だから、裕と違って暇じゃないの」

「僕、一度も暇人だなんて言ってないけど?なに勝手に決めちゃってるの?」

「は?どう見たって、裕は暇人でしょ」

ケンカをし始める二人の間に、私は小さな声で割り込む。

「あの…、ケンカは……」

「…おい、着いたぞ」

私の声に被さるように、藍さんが面倒くさそうに車の窓を開けて指を差した。

…は、早いですね……。結構な速度で、車を走らしたんですかね…?

「優、早く降りて!」

「あ、すいません……」

裕君は、私の背中を押して私を車から降ろす。

「クラス、一緒になれるといいね!」

「はい!」

裕君に笑顔で話しかけられ、私は笑顔で返事を返した。

車から、愛希君と翔君が降りてから校門をくぐり、クラス表を見に行こうと玄関先へ向かう。

玄関先には、沢山の人がいて。

いや、沢山のヴァンパイアがいて…ですね。見る限り、胸ポケットに薔薇の模様をつけてる人は見当たらない。

もしかして、結構、少ないのかも……。

「優、優!!僕達、皆、同じクラスだったよ!!」

「へ?!」

裕君が、私の手を引っ張ると、クラス表の前に連れて行ってくれた。

裕君が指差す方へ視線を向けると。

男子の列に。
1のS那崎翔。
1のS那崎愛希。
1のS那崎裕。

女子の列に。
1のS神咲優。

皆さんと同じクラスです!!良かった…。知らない人だらけだと、心細くなるので、安心しました……。

「やった!僕、凄い嬉しい!」

裕君は、愛希君と翔君が待っていた人集りの後ろに着くまで、ずっと嬉しそうに話していた。

「裕と同じクラスか…。最悪…」

「でもでも!優と同じクラスだよ!」

愛希君は、少し不満そうに文句を言っていて。翔君は、これから毎日、楽しみなのか瞳をキラキラさせていた。

「まぁ、それならまだマシだけど…」

「んじゃ!クラスに行こっか!」

少しテンションが低い愛希君。
少し…、いや結構テンションが高い翔君。
少し嬉しそうな裕君。

三人の後ろ姿を見て、私は思わずクスリと笑う。


私も、皆さんと同じクラスになれて本当に嬉しいです。

これから、一年間。

どんな一年間になるか、まだ分からないけど、今はただ純粋に…とても楽しみです!
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