私、ヴァンパイアの玩具になりました
「……綺麗です。…アナタの笑顔も……、怯えている顔も…全て……。…独り占めしたい位です…」

チュッと薫瑠さんは、私の首筋にキスをした。一回だけかと思ったら、薫瑠さんは何度も私の首筋にキスをする。

く、くすぐったい……。

「………アナタの香りは…理性を壊しますね……。…俺の理性も…、もう壊れそうです………。…この首筋に…俺の物という印を付けたいです………」

薫瑠さんは私の腰に手を当てると、グイッと薫瑠さんの方に私を引き寄せた。

「…ぁ……あの……」

「……ちょっと、黙ってて下さいね……」

薫瑠さんと目があった次の瞬間。

私の身体はピンッと固まり、声も自由に出せなくなっていた。

「………………!?」

そんな私に容赦なく、薫瑠さんは私の首筋に何度も強く吸い付き、小さくて鮮やかな色をした赤い印を付けていった。

「────………っふ…。……血を飲む時と同じ位に興奮しますね…」

「─────!!」

微笑んでる薫瑠さんに、訴えかけるように口を開くけど、声は何かに止められてるかのように全く出ない。

助けて…、誰か……。声が出ない…。……身体も動かないよ…。

私、どうなるんだろう?……このまま、ずっと薫瑠さんだけど薫瑠さんじゃない人といるの…?

…声が出ないと……、助けが呼べない…。なんで、出ないの…………?

「…あ、声ですか……?…今は出ませんよ?…俺達兄弟は、血を飲む時に相手が逃げないように身体と声の自由を…奪えるんです。………普通のヴァンパイアは出来ませんよ。………何故なら、俺達は普通のヴァンパイアより優秀なヴァンパイアなんです」

私の疑問が薫瑠さんに届いたのか、薫瑠さんは分かりやすく説明してくれた。

「───、……助け…、────!!」

その瞬間、私の声が急に自由になった。でも、助けを呼ぼうとした途端、またすぐに声の自由は奪われた。

「…それに、俺達は相手の身体と声の自由を操れるんです。…現に、少しの間、自由になったでしょ?」

薫瑠さんはニコッと優しく微笑むと、私を抱き上げて真っ暗な部屋を歩き出した。

「──────?」

ポスンッと柔らかい何かの上におろされる。そこがベットだと分かるのにはそんなに時間は掛かんなかった。

薫瑠さんは私の上に被さるようにしてベットにあがると、私の顔を上から覗き込む。

そして、薫瑠さんは哀しげに微笑むと、私の頬に優しく手を当てた。

「……怖いですか?」

「──────」

私は頷くことも、首を横に振ることも出来ない。身体の自由は、全て薫瑠さんに奪われてるから。…でも、例え身体が自由でも私は多分答えない。

だって、普段の薫瑠さんは私に優しいから…。怖いなんて、思えないよ…。

「…俺の事……嫌い…ですか?」

綺麗な瞳に、薫瑠さんは涙を溜めていた。

「──────」

そんなの…答えれるわけ……ないじゃないですか…。

いつも優しい薫瑠さんを…、嫌いになんてなれないです…。

私が頭の中でグルグルと考えていると、薫瑠さんは綺麗な涙を流して、私の頬に手を添える。

「………俺が……怖い…ですか…っ……?」

薫瑠さんが泣き始めた途端、私の身体の自由が元に戻った。

「…か、…薫瑠さんっ…!」

身体の自由が戻った私は起き上がり、泣いている薫瑠さんの涙を手のひらで拭う。

それでも、薫瑠さんは泣き止まない。それどころか、涙は溢れるばかりで。

「……ぃや…だ…、…いやだ…いやだ……」

私はただ、薫瑠さんが流す涙を拭ってあげることしか出来なくて。

そして、薫瑠さんの涙の量が増える度、窓がガタガタと震え、扉がガチャガチャと音を立てて震え始めてきた。

「……薫瑠さん…?」

「…ぅ…うぁ…っ…」

そして、薫瑠さんの目が光った瞬間。

───パーンッと薫瑠さんの部屋の窓全てが粉々になって割れてしまう。

私は、ガラスの破片から薫瑠さんを守る為に薫瑠さんの事を抱きしめる。

小さなガラスの破片が私の頬に凄い勢いで当たった。

ガラスの破片が当たった頬からは、ツゥ──と、血が垂れる。

痛い…、でも…今は薫瑠さんの…状態を確認しないと……。

私は急いで、薫瑠さんの状態を確認した。

薫瑠さんは、気を失ってしまったのか、クタァと私に倒れ込んできた。

「薫瑠さん、薫瑠さん?」

私が薫瑠さんの名前を呼び続けていると、薫瑠さんの部屋の扉が勢いよく開いた。
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