私、ヴァンパイアの玩具になりました
「優と僕は一緒に暮らしてる関係だけど?…王神と違って、深い仲なーの」

ニヤリと裕君は勝ち誇った笑みを浮かべて私の頬にキスをすると、王神君を見下ろす。

急な事に、私の顔は真っ赤に染めあがる。

は…恥ずかしいです……。顔が暑くなってしまいます……。

しかも……、女子からの視線が…段々と酷くなっていっているような…。

「……一緒に暮らしてる…?…優、それは本当か」

王神君は、信じられないような視線を私に向けて問いかけてきた。

「…えーと……。……はい。…おじさんと約束が……、…………ぅわっ!?」

私が赤い顔のまま詳しく話してる途中で、私の身体はグイッと誰かに引っ張られ、バランスを崩す。

「せーかくには…。僕達家族全員とメイドと執事と皆で!」

「………あ、…し…翔君…」

私の腕を引っ張って、肩を抱き寄せてきたのは翔君でした。

「…ちっ………。翔、邪魔しないでよ。…せっかく、優から王神を離せると思ったのに…」

裕君はタイミング悪くやってきた翔君に舌打ちをすると、翔君から私を引きはがそうとする。

グイッと裕君に引っ張られ。またグイッと翔君に腕を引っ張られ。

またまた裕君に引っ張られ。の繰り返し。

「だって、嘘はいけないよ?嘘はー!ね?優ー?」

目が笑ってない翔君に微笑みかけられ、私の身体はピシッと凍りついてしまう。

「……えっと…、……あはは」

私は、長年使ってきた必殺技を使いました。

必殺!笑って誤魔化す!

……私、気づけば…この技しか持ってませんね…。

「…ていうか、優から手離してよ。翔!」

「そっちが離せばー?」

二人はケンカしながら容赦なく、私の腕を引っ張り合う。

私が真っ二つに切れそうです…。

「あ、…あの…。腕…痛いです……っ」

「お主ら。…優が困ってるじゃないか。…ヤメてやれ」

私の訴えに気づいた王神君の言葉に、二人は何とか私の腕から手を離してくれる。

「…えっと……。私、時間が無いので…職員室行ってきますね」

ジンジンと痛む腕を無視して、私は三人に微笑んでからプリントを一人で持つ。

「優。ソナタ一人じゃ、大変だろう。我もプリントを持って、職員室へ行こうじゃないか」

王神君は、私から半分のプリントを持つとニコッと笑う。

「あ、ありがとうございます」

私がお礼を言うと、王神君の頬は少し赤く染まった。

……風邪でしょうか?…王神君、顔が真っ赤です…。

裕君は、私と王神君のやり取りを見て、王神君からプリントをまた取り上げた。

「……おい、裕」

「………王神は来なくていいよ。僕と優の二人で行く」

そして、裕君が取り上げたプリントを次は翔君が横取りする。

「僕も職員室行くー!」

「は?僕の話聞いてた?…翔は邪魔だから、来なくてい…」

「じゃあ、優!行こー?」

翔君はワザとらしく裕君を無視すると、プリントを片手で持ち、私に微笑んだ。

「ちょっと!無視しないでよ!」

翔君の分かり易い無視に、裕君は大声をあげて、翔君の肩をガシッと掴む。

「んー?裕、どうしたのー?」

翔君は、怒っている裕君に対し、火に油を注ぐかのような、バカにした笑顔を裕君に向けた。

「翔は教室で待ってていいの!僕が優と職員室に行くんだって!」

裕君は翔君からプリントを取り返すと、頬を膨らませる。

「はぁー?そんなの理由になってませーん」

裕君の言葉に翔君は、またプリントを奪い取る。

それが何度も何度も続き、気づけば一時限目が始まる五分前になっていた。
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