Wonderful DaysⅠ
それを一瞥した葵さんは
「何だよ」と面倒臭そうに返す。
「お前が、そこまでする必要はねぇだろ。」
葵さんに言葉を掛けながら、ぎろりと私を睨み付ける赤髪。
「おい、田中」
───た、田中?私は周防なんですけど・・・
私を睨み付けて『田中』と呼んだ赤髪。
私の事を呼んだのかと思えば、集団の中から「はい」と声が聞こえる。
きょろきょろと視線を巡らせると、ひょっこり顔を出したのは白いニット帽を被った男の人。
目がパッチリ二重で、可愛いアイドルみたいだな・・・
「この女を、そこのコンビニまで連れて行け」
田中さんに私の道案内を命令した赤髪は、私と視線を合わせるとクイッと顎で「行け」と合図する。
それを見ていた葵さんは、ちらりとスマホを確認すると「───はぁ」と溜め息を吐いた。