Wonderful DaysⅠ
「は?」
「初めて彼女に会った時、白石に回し蹴りを食らわせてた」
そのシーンを思い出しているのか、心なしか口角が上がっているようにも見える。
「おいおい…白石を瞬殺って……」
葵の言葉が信じられないのか、言葉を失う蓮。
「それから……マリアちゃんにさっきのような乱暴な真似はするなよ?」
蓮だけではなく、神威のメンバーに聞かせるように周囲に視線を向ける。
「何で、そんなにあの女を気に掛けるんだよ?」
僅かに低くなった声で疑問を口にすれば
「蓮…彼女は……」
躊躇いがちに発した言葉を一度、区切ると
「ドゥカのタンデムに乗ったんだ」
はっきりと聞こえたその声は、静寂なその場を風と共に走り抜けた───