Wonderful DaysⅠ
その姿を見て、ちょっと違和感を感じる。
───あれ? 兄さん、何でスーツなんだろ……
いつもなら、Tシャツにジーンズみたいなラフな格好をしているのに。
そんな事を思いながら制服を着てリビングに入れば、焼きたてパンの香ばしい匂いが鼻腔に広がる。
「おはよう、マリア」
本日もエプロン姿で朝食の準備に取り掛かっていた修さんが、横のカウンターから顔を覗かせた。
「おはようございます、修さん」
挨拶をしながら修さんが準備していた、紅茶が乗っているトレーを受け取ってテーブルに運ぶ。
「ありがとう」
修さんにお礼を言われて笑顔を返す。
「あぁ、そうだ。マリア」
声を掛けられて隣に座る兄さんに視線を向けると
「今日から、暫く国に戻る事になったから」
心配そうに私を見ていた。