Wonderful DaysⅠ
ちらりと前方に視線を向けたけれど・・・
さっきまでキャーキャー言っていた女の子達の声が聞こえてこない。
───あれ?
そのまま正門を潜れば人の気配は無く、近くのガードレールにはカラスが一羽。
結城さんと呼ばれた男の人も、あれだけ群がっていた女生徒の姿も見当たらなかった。
───もう帰っちゃったのかな?
「な~んだ。ちょっと、見てみたかったな」
少しガッカリしながら家の方向に足を向ける。
歩き始めたけれど、冷たい風で耳が痛い。
「誰もいないよね?」
キョロキョロと周囲を見回して人がいない事を確認してから髪を解いた。
メガネのフレームも冷たくて一緒に外すと、さらりと落ちてきた髪の毛が風を防いでくれて耳の痛みが和らぐ。