Wonderful DaysⅠ
                            ◇




……ゆらゆらと揺れる湯気の向こう側に見える、見目麗しいお方。

ソファーの背に凭れ、長~い足を組んで優雅に紅茶をこくりと喉に流し込みながら、周囲から向けられている痛いほどの視線を完全無視している魁さん。


───あれから、寒さに耐え切れず……

再びバイクの後ろに乗せられて、繁華街のファミレスへとやって来たのだけれど。

何処に行っても有名人な魁さんは、此処でも注目の的だった。
魁さんが近寄るなオーラを醸し出しているからか、近付いては来ないけど遠巻きに見ているから、何だか動物園のパンダになった気分……


「あの……魁さん」


「何だ」


おずおずと呼べば、カップをソーサーに乗せてこちらへ視線を流してきた魁さん。


「えっと、私は大丈夫なので……」


此処に置いて行ってほしいと言おうとしたのに、魁さんのスマホの着信音によって遮られてしまう。

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