Wonderful DaysⅠ


“──振り落とされないように──”

何でいきなり、そんな事を言うの?

前に向き直った魁さんは、左手をハンドルから離して人差し指を立てるとクルクルと回し始める。


───な、何してるんだろう?


次の瞬間、一気にバイクを加速させた魁さん。


───ひぃぃぃ───っ!!お、落ちる───っ!!!


魁さんの腰に回していた手に力を入れ直して、しがみ付く。

痛めた右手首には、あまり力が入らないから左手に渾身の力を込める。

ゆっくり走っていた時みたいに、周りの景色を見る余裕がある筈も無く……

ただただ、「振り落とされませんように!」と心の中で祈っていた。


暫くは、そのスピードで走り続けていたのだけど……


目をギュッと閉じていてもわかる、相当な速度で走っている筈のこのバイク。


───あれ? 今のって……蓮さん?


一瞬だったけど、バイクの横を猛スピードで走り抜けて行く蓮さんの横顔が見えた。


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