Wonderful DaysⅠ


部屋を出た蓮さんは、何も言わずに何処かへ向かって歩いている。

その後姿をボーっと見ながらついて行く私を不思議そうに見て行く通りすがりの男達。
その中には、さっきトイレで麻雀をしていた男もいて、訝しげな顔をしていた。


───野宿しないで済んだけど……


この視線は嫌だな。

誰にも気付かれないように小さく溜め息を吐いて、視線を下げた。


───ドンッ


「うおっ」


「ぶっ!!」


下を向いて歩いた瞬間に立ち止まった蓮さんの背中に鼻をぶつけた。

まさか、ぶつかってくるとは思っていなかった蓮さんは


「何処見てやがる」


苛立ちマックスの低い声で唸る。


───蓮さんって野生の狼みたいだな


なんて、暢気な事を頭で考えていたら


「入れ」


蓮さんの向こう側に見えた扉をガチャリと開けた。

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