Wonderful DaysⅠ
「おーい……」
誰もいない部屋で、誰かを呼んでみる。
もちろん、誰も返事はしないのだけど……
蓮さんに「ちょっと待ってろ、クソ女!」と言われてから、かれこれ30分が経過しようとしているんですけど。
「誰か、いませんかぁ~?」
自然と、か細くなって行く声。
最初の20分は立って待っていたけれど、腰が痛いから床に座って膝を抱えた。
こんなに待たせるなら、椅子くらい置いておけよ!って言いたい。
此処から出たって迷子になるのがわかっているから動く事も出来やしない。
「蓮さんよーい……」
あなたが俺様でドSなのはわかりましたから、放置プレイはやめて下さい……
段々、眠くなってきちゃったけど、コンタクトしたままなんて怖くて寝れない。
重い瞼を何とか持ち上げていれば、カチャリと開いた扉の向こうにホッとした表情の葵さんが立っていた。
「やっと、見つけた。待たせてごめんね?
蓮のヤツ、女の子をこんな所に放置するなんて」
蓮さん、本当に放置ですか。
ホッとする笑顔に立ち上がれば、直に座っていたお尻が痛い。
───くそぅ、蓮さんのせいだ。
痛むお尻を摩りながら、葵さんの待つ扉に向かった。