Wonderful DaysⅠ
基本的に一人で居る事が多い魁は、何か用が無ければ探される事は無い。
「魁。お前、あの女の家知ってたのかよ?」
この部屋で魁を見るまでは威勢の良かった蓮。
しかし、感情の無いダークブラウンの双眸に自分の姿が映し出されると、発した言葉は殊の外小さく魁の耳に力無く届いた。
「───あぁ…」
「何で、言わなかった?」
魁の口から肯定の言葉が出ると、少し語気を強める蓮。
「マリアの事は調べなくていい。
それに……俺はもう、神威の人間じゃないだろ」
「でも、仲間である事に変わりは無いだろうが」
蓮の言葉に微かに苦笑いを浮かべて、視線を足元に逸らした。
「俺の我侭で神威を抜けたんだ。マリアだけじゃない。本来なら、俺も此処に居るべきじゃない」
魁の言葉を聞いた蓮は、首を横に振って自嘲気味に薄く笑う。
「元々、あの日迄って条件で俺達が無理矢理、神威の総長を頼み込んだんだ。
魁に非はねぇよ……」