Wonderful DaysⅠ


「聞いてねぇんだけど……」


「言ってねぇからな」


呆気に取られる二人に、ぽつりと零れた言葉。


「なら、尚更拙いだろ?」


葵にしては珍しく、魁に語気を強めると


「……お前達に話しておく事がある」


凭れていたガラスから背を離し、二人に近付く魁。

一度、息を吐きゆっくりと話し始めた───

二人は魁の口から紡ぎ出される言葉に、驚愕の表情を浮かべ、口を噤む。


「マジ!?」


顔を引き攣らせる蓮に、こくりと頷く魁は


「誰にも言うなよ」


釘を刺して部屋を後にした。

その後姿を見送った二人は、盛大な溜め息を吐いて顔を見合わせる。


「今後の対策を練るか……」


新たに増えた悩みの種に、前髪をかき上げて隣にいる人物に視線を投げる。


「そうだな……」


提案に賛成した蓮は、葵と共に力無く扉に向かった。


< 238 / 757 >

この作品をシェア

pagetop