Wonderful DaysⅠ
「聞いてねぇんだけど……」
「言ってねぇからな」
呆気に取られる二人に、ぽつりと零れた言葉。
「なら、尚更拙いだろ?」
葵にしては珍しく、魁に語気を強めると
「……お前達に話しておく事がある」
凭れていたガラスから背を離し、二人に近付く魁。
一度、息を吐きゆっくりと話し始めた───
二人は魁の口から紡ぎ出される言葉に、驚愕の表情を浮かべ、口を噤む。
「マジ!?」
顔を引き攣らせる蓮に、こくりと頷く魁は
「誰にも言うなよ」
釘を刺して部屋を後にした。
その後姿を見送った二人は、盛大な溜め息を吐いて顔を見合わせる。
「今後の対策を練るか……」
新たに増えた悩みの種に、前髪をかき上げて隣にいる人物に視線を投げる。
「そうだな……」
提案に賛成した蓮は、葵と共に力無く扉に向かった。