Wonderful DaysⅠ
困惑の表情を見せた私に気が付いた声の主は
「覚えていませんか」
眉間に皺を寄せて、睨んでくる。
イギリス人の男性の顔をジッと見るけれど、全く覚えが無い。
「…………」
何だか怖い雰囲気に顔が強張るけれど、声が出てこない。
イギリスに来て半年を過ぎた頃から、記憶が曖昧で会った人の顔なんて覚えていない私は、どうしていいのかわからずに、ただ立ち尽くしていた。
「What happened?(どうかされましたか?)」
後ろから掛けられた言葉に振り向けば、日本人の男性と、私と同じ位の年の男の子が立っていた。
「Can I help you with something?(何かお困りですか?)」
日本人の男性が、私を睨んでいたイギリス人に話し掛けているのを見ていたら、急に引かれた右手。
「お前は、こっち。」
男の子に手を引かれて、そのまま会場を後にした。