Wonderful DaysⅠ
その瞬間、心臓がどくんと大きな音を立てた。
初めて男の子に手を握られて、びっくりした心臓がドキンドキンと煩い。
───は、初めて男の子に手握られちゃった……
無言で進んで行く男の子と繋がれている自分の手に視線は釘付けで。
男の子に免疫の無い私の手は妙に熱を帯びていた。
誘導されるままについて行けば、立ち止まったそこは、アル兄さんに「待っていて」と言われた場所だった。
「お前の兄貴って、何処に居るんだ?」
男の子に掛けられた声に、視線を上げる。
「さ、さぁ?」
何処に行くかも言わないまま、人混みに紛れてしまった兄の居場所など知る筈も無く……
私の返事を聞いた男の子は
「───行くぞ。」
はぁ……と、深い溜め息を吐くと繋ぎ直した手を引いて、また歩き始めた。
「お前、名前は?」
肩越しに振り返って聞いてくる男の子に
「マリア・ウィンザーです」
初めて自分の名前を口にした。