Wonderful DaysⅠ
綾ちゃんが食堂を出て行った後も、隣で話し続けていた荒井さん達。
お味噌汁のお椀を手に持ったまま、動けずにいた私は転校生の暁さんの顔を思い出していた。
お人形のように可愛い暁さん。
魁さんと並んだら、きっとお似合いなんだろうな……
「はぁ……」
二人が並んでいる姿を想像したら溜め息しか出てこない。
それにしても……
───魁さんに恋してるって、わかったその日に失恋って……
悲し過ぎる。
恋人がいるって言う噂とかなら、まだ希望はあるんだろうけれど、婚約者なんていたら絶望的じゃないか。
今でも、あの魁さんの笑顔を思い出すと、胸が苦しくなるほどドキドキするのに……
───諦められるのかな……
お椀の中の味噌汁に浮かぶ自分の顔を見て、もう一度溜め息が出た時、誰かが近づいてくる足音が聞こえた。
その足音がすぐ傍で止まって、不意に出来た影に視線を上げれば
「あなたがマリアちゃん?」
今の今まで、荒井さん達の話の渦中にいた暁さんが私を見下ろして立っていた。