Wonderful DaysⅠ
「は、はい…そうですけど……」
学校で綾ちゃん以外の人に下の名前で呼ばれた事の無い私は、戸惑いながらも返事をすると
「ちょっといいかな?」
首をこてんと傾げて、私には出来ないような可愛らしい仕草をする暁さん。
───この人が、魁さんの婚約者……
改めて見ても、私なんかが勝てる相手ではないのは一目瞭然で。
女の私でも見惚れてしまうような笑顔に、断るなんて事は出来る筈も無く……
声が出ない代わりに、こくりと頷いて席を立った。
「ちょっと、暁さん。周防さんに何の用?」
そんな私達を見ていた隣の席の荒井さんが、少し強い口調で暁さんに話し掛ける。
「マリアちゃんと、ちょっと話をしたくて」
それを気にする事無く、笑顔で答えた暁さんは私の手首を掴むと、スタスタと歩き始めてしまう。
話をした事も無い転校生の暁さんが、何の話をするのかわからないけど、引かれるままに後をついて行った。