Wonderful DaysⅠ


───誰?


「あの……?」


困惑する私に近付いて来る男の人は、目の前まで来ると足を止めた。

サングラスをして光沢のある派手なスーツに身を包んでいる男の人は、この寒い日にシャツの襟元を大きく開けていて、そこからはシルバーのネックレスがちらりと見える。


───ホスト?


ホストにしか見えない格好で、女子高の正門前で待ち伏せなんて……

怪しい人にしか見えない。

近過ぎる距離に、少し警戒をしていれば


「ずっと、会いたかったんだよ~。マリアちゃん」


サングラスを外して私の肩に手を添えると、にっこりと笑顔を見せる男の人。

普段ならば触れられた瞬間に、体が反応する筈なのに動けなかったのは……


その笑顔が“ゆう君”の笑顔と重なってしまって、頭が真っ白になったからだと思う───


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