Wonderful DaysⅠ
「…………」
───兄さん? 何ですか、この地図は……?
広げたそれは、日本地図。
その中の、横浜と言う所に赤い点。
その点から矢印が伸びてて、『MARIA』って名前が書かれていた。
どうやら此処が目的地らしい。
「嘘でしょ? 私が、極度の方向音痴なの知ってるよね……?」
こんな、大雑把な地図で辿り着けるわけないじゃん!
取り敢えず、文句を言う為に連絡!!
ポケットに手を入れて、携帯を取り出す……
取り出……
いくらポケットに入れている手を動かしても、携帯の感触が伝わってこない。
「ないっ!!」
入れてあった筈の携帯は、ポケットに入っていなかった。
落としたの?
連絡手段がなくなった私は顔面蒼白。
───兄さん、私、無事に辿り着けないかも……
兄さんと連絡を取るのを諦めて、とぼとぼと歩いていれば前からお巡りさんが歩いて来た。
神の助け!!
ガラガラと荷物を引いて駆け寄った。
「すみません! 携帯落としちゃったんですけどっ!」
勇気を振り絞って出した声は震えていた。