Wonderful DaysⅠ
「え? あのっ……!」
未だに俺と此処に来た理由がわからないのか、困惑顔の彼女に
「ほら、早く行かないと。お兄さんと食事の時間に間に合わなくなっちゃうよ?」
言葉で促せば、たじろぎながらも店長に案内されて奥の部屋に消えて行った。
此処は県内でもトップクラスの実力を誇る、トータルビューティーサロン。
此処で彼女が変身している間に、待合室のソファーに腰を下ろして胸ポケットからスマホを取り出す。
タイミングを見計らって置かれたコーヒーの香りを楽しみながら、連絡先を開いて目当ての相手を選び出す。
無機質な呼び出し音が聞こえて耳に当てれば
『───…何だ』
ものの数秒で電話口に出た相手は、とても年下とは思えない応対で。
「やっほー、魁君。元気?」
『あ?』
生意気な口を利いているけど、可愛い弟だ。